漆黒

□THE PATRIOTIC QUEEN
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Just listen,

Darling,can we still be friends?
Now love begins does friendship end?
Nothing will change,you will see.
You'll stay the same,I'm still me.
Just remember the days,when we said this was meant to be─
Meant to be.


─DICK LEE『still friends』1990





ボヘミア公国編@


THE PATRIOTIC QUEEN
Esther Blanchett







アルビオン王国・首都ロンディニウム。
宮殿内、女王執務室。

エステルは夜着の上からガウンを羽織り、真夜中にも関わらず執務卓前で頭を悩ませていた。

教皇庁とゲルマニクスが、ボヘミア公国の資源収奪のもと共謀、政権を事実上崩落させんと画策している。
これ迄にも侵略され滅亡して行った国は歴史上多々あるが、ボヘミア公国となれば話はまた別な可能性がある。

真人類帝国に隣接するボヘミア公国は、ボヘミア戦役・ブルノの戦い等、過去何度も戦禍にあう度に教皇庁が介入し沈静させる等してきたが、公国の情勢は未だ不安定であった。
ゆえにいっそ教皇庁で国ごと買取し、帝国への防衛戦を築こうというのは、いかにも教理聖省・フランチェスコが考えそうな事だ。資源云々より十中八九、その腹づもりと見てとって良いだろう。
だが、その話にゲルマニクスが乗ってくる真意は何だろう。

ゲルマニクス王国は、諸国に比類無き軍事国家として発展を遂げてきた。
中でも国王直属の親衛隊-SS-と呼ばれる師団は、元々は護衛部隊であったものが組織化され、国家警察として機能しだし、やがて国内治安維持の為の武装組織として編成された。
部隊内部の個師団編成は「警察」、「武装SS」、「髑髏-トーテンコープ-」の3つで、"兇王"の異名を持つ国王ルードヴィッヒ一人に忠誠を誓う全体主義を貫き、列国最強の軍隊として恐れられてきた。

ゲルマニクスがボヘミア公国を手に入れ、その軍事勢力拡大を計る。確かに戦争の大義名分としては十分だ。すると今度は教皇庁と組む理由を見失う。

帝国への防衛戦を築きたい教皇庁。
国家を拡げ軍事勢力拡大を計るゲルマニクス。

双方の利点を追求するとしたならば、教皇庁はゲルマニクスの進軍を黙認し、ゲルマニクスは大人しく防衛戦構築案に乗ったという事になる。

何故この時期に?
これが意味する事とは?

「まさか……帝国に宣戦布告?」

エステルはガウンの前を合わせて身震いした。
人類と吸血鬼の全面戦争、そしていつもその謀略の影に潜むのは………

「薔薇十字騎士団-ローゼンクロイツオルデン-…!」







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