漆黒

□min geselle
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Sors immanis et inanis,
非情かつ洞なる運よ、

rota tu volubilis,status malus,
汝は円環を廻る車輪の如く、

vana salus samper dissolubilis,
凪ぎとて心安まらず、

obumbrata et velata michi quoque niteris;
影に隠れ、闇となり我を凌駕せん

nunc per ludum dorsum nudum fero tui sceleris.
汝の悪戯に、我は背を蔽う衣さえ失せなんだ


O Fortuna,velut Luna
おお、運命よ、の如きその姿よ



──CARL ORFF『CARMINA BURANA』"FORTUNA IMPERATRIX MUNDI"





ボヘミア公国編A〜前編〜


min geselle
Ion Fortuna
Abel Nightroad








12月。

凍てつく青さを湛えた大河ヴルタヴァは、悠久を数える歳月を経て尚、ボヘミアの街を静かに流れて征く。
「百塔の街」と呼ばれるだけあって、公都プラークには尖塔が多く、中世の面影が色濃く残る町並みは、さながら美術絵画か玩具箱のようであった。だがそれも公都近辺に限られる。

ボヘミアは、国政に介入するゲルマニクスの影響を受け急激に工業化が進められており、神学は教皇庁、カトリックの教えに従っていた。否、従わざるを得なかった。
公国内で昔からある宗派にとっては、カトリックを教える教皇庁こそが異端であったにも関わらず、皆、口をつぐむしか出来なかった。

世界最大の軍事力を誇る二強に睨まれ、あげく吸血鬼達の棲まう夜の国・真人類帝国と隣接しているボヘミアは、いつの時代も政治的に不安定で、だが不安定であるからこそ、帝国との均衡を保ってきたのかも知れなかった。

傾けば、終わる。

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