漆黒
□S T O L Z -pride-
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そして君に告ぐよ
あの日の想い 言い出せなかった言葉
君の月と宇宙ーソラーに咲いていた僕は
全てを知っていたのに
そして形だけの
枯れた時なんて 崩れてしまえばいい
幼いあの時に置き去りにした
自分を思い出せなくて
この痛みさえ 誰も気付かずに
終わっていくの?
ああ 見失いそうになる
落ちてゆきそうになる
戻りたいよ 知っているよ
もう 壊れるだろう
生まれるだろう
Can you hear me?
Can you be awake?
──YOU SUGIHARA『LUCIFER』1997
666,NUMBER OF THE BEAST
01:Cain Knightlord
S T O L Z -pride-
誰かが呼んでいる
あれは弟だ、そうだアベルだ
ああ、そんなに喚かなくとも聞こえているさ
平気だよって笑って手を振りたかったんだけど
おかしいね すまないね
……君は無事なんだね、
よかった
……随分と歩かされている気がする。
歩かされている?否、解らない。誰かに何処かへ行けと言われたワケでもなければ、自ら行きたい場所なんてないのに。何より自分の足で歩いているのかさえも解らない。
両足が交互に動いている気もするけれど、ではこの鉛の様な二本の棒切れは何だろう、爪先を見せたかと思えば踵を天に突き出して…
いや、天地があるのか?
辺り一面が白い場所。上を向いているのか下を向いているのか、前進しているのか後退しているのか。
そもそも、白いと認識はしているが、この目が開いているのかさえも不確かだ。
それを確かめるべく手を充ててみようと試みるも、はて、両手は何処にやったかな?
……先刻から、自分を呼ぶ声がする。
アベル……リリス?
遥か彼方か……耳元のような気もする。悲痛な叫びと慈愛の祈り。低く高く飛ぶ鶺鴒の如く、僕の周りを行ったり来たり…
「時が見える?」
不意に頭上で声がして僕は顔を上げた。
何時の間に其処に居たのだろう、白い服を着た小さな男の子と目が合う。金色の髪に冬の湖色の瞳。
彼は無邪気な笑顔を浮かべて、すうっと腕を上げたかと思うと、僕の背後を指差した。
虚空に開いた穴から血が滴れる。血溜りの中から、植物の蔦が伸びて僕の自由を奪う。
「時が、見える?」
彼が自嘲う。
そう、僕は思い出す……
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