千歳

□桜花乱舞〜伍〜
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浩二郎への想いをつのらせる反面、えも言われぬ不安がRickyの胸を締め付ける。
一方浩二郎も、心に矛盾を抱えて苦しんでいた。
陽炎と共に死んだ筈の己の恋が、今再び燃え上がるのを自覚しながら、敢えて考えずにいるかの様に……





桜 花 乱 舞〜伍〜





「ん…っ」
何度目かの口付けのあと、浩二郎さんは優しく微笑んで僕の瞳を覗き込んだ。
僕はまだ火照った躰を彼の胸に預けて、情事の余韻に酔っていた。
彼は僕の髪に顔を埋め、僕を抱き寄せて目を閉じる。
柔らかい闇に包まれた僕らの上に、甘い至福の時が流れ、僕は彼の鼓動に耳を傾けていた…

「…もし…俺以外の奴にこんな事されたら…オマエ、どうする?」
浩二郎さんは意地悪く笑いながら僕にそう言った。
僕はむっとして彼を見上げる。
「嫌だ」
「オマエが嫌でもよ、力ずくでねじ伏せられちまったらどうすんの?もうアレよ、オマエちっこいからアッという間よ」
「ヤだっ」
僕は半身を起こして抗議を始めた。
「舌噛んで死んでやる!じゃなきゃきっと耐えられないもん、あんな…恥ずかしい事っ…浩二郎さんだから…貴方にしか…」
「悪かったって、ムキになんな、バカ」

彼は僕の腕を取り、また自分の方へ引き寄せた。さっきよりも僕を抱く腕に力が入る。
「…拗ねんなよ」
「べ、別に拗ねてなんか…あっ、ちょ、ちょっ、…」
浩二郎さんは僕の抜き身を柔らかく握り込んだ。
「ねぇ、恥ずかしいあんな事ってどんな事?」
「…なに言っ…」
「こんな事?」
「ん…っや…」
「…それとも、こんな…?」
「ッ…指抜いてよ…さっきヤッ…た、ばっかじゃ…ちょっと、って!」
「このままイクところが見たいの」
「いじわ…っ!…だ…めだってばっ…動かさな…アッ…!」

浩二郎さんは喘ぐ僕の顔を見つめていた。
片手で僕自身を扱き、もう一方の指は僕の蕾に深く埋めたまま…僕の仰け反る首筋や、吐息の漏れる口唇に視線を這わせる。
僕は気が狂れそうだ。
「…ッ、あ…!…イッ…ちゃう…よゥ…」
「いいよ、全部見ててあげるから…」

僕は激しく躰を震わせ、彼の胸に顔を埋めて果てた。
何度もひくつく僕を、浩二郎さんは強く抱き締め、やがて浮言の様に呟いた…

可愛い俺の…俺だけの……と。





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