撫子

□HEAVEN!!
2ページ/9ページ

啓太が振り返ると、その人物は一瞬だが身体を硬直させた…目を見開いて、頬には赤みが差している。

(誰だろ、カッコイイ…ハーフ…みたいだな…)

啓太もぼーっとしていると、その人物ははっとして啓太に近寄り、優しく微笑んだ。

「もしかしてキミが…MVP候補生かな?」
「ハ、ハイ、そうですオレ…」
「ジーザス!…ああ何て事だろう…ねぇキミは一目惚れって信じるかい?」
「はぁ?」
「おっと、まだ名前すら訊いていなかったね」

啓太は相手の勢いに気押されながらも、慌てて自己紹介をした。

「伊藤啓太です」
「啓太…啓太ね…うん、いい名前だ。僕は成瀬、成瀬由紀彦」

成瀬、と名乗った彼は、後ろで束ねた金髪をつい、と解き、それから啓太の右手を取ると指先に軽く口付けをした。

「うぁっ…あ、あの、」
「歓迎するよ、僕のハニー」


ハハハハニー!?と啓太が目を白黒させていると、すぐ横の扉が開いて誰かが顔を出した。
成瀬を見つけるとあっという顔をして、つかつかとにじり寄る。

「成瀬さん!?アナタこんなトコで何してるんですか!これから理事長との謁見でしょう!」
「やれやれ…もう1人の候補生は厳しいねぇ」
「もう1人の候補生?」

啓太は驚いて顔を上げた。
……背は啓太よりも少し高くて、髪は淡い栗色、目鼻立ちの整った顔、よく透る声。
何より、昔何処かで逢った事がある様な…

「ああ、キミが伊藤啓太くん?初めまして、俺は遠藤和希、キミと同じ候補生だよ」
「初め…まして」
「じゃ、理事長室まで一緒に行こうか。成瀬さん、アナタはあっち」

一緒に付いて来ようとした成瀬だが、軽く追い払われて仕方なく手を振った。

「じゃあハニー、また、後で」



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ