撫子

□是最后一个恋人
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秀麗の眉がぴくりと動く。

……かつて、似たような台詞を似たようなシチュエーションで聞いた事を思い出す。
"彼"と朔洵から同じ匂いがするのは、形は違えど2人とも「孤独」であるからなのだろうと、思う。
なんだってこう自分の周りには寂しい人が多いのか。

そしてそんな彼らが伸ばしてくる腕を無下に振り払う手を、秀麗は持っていない。


「……手、繋ぐだけよ」
「…うん、解ってる」
「私の手、お姫様みたいに綺麗じゃないわよ」
「この手が良いんだ……私の為に二胡を弾いてくれる、お茶を淹れてくれる、私の髪を結ってくれる…この世でこの手だけ」

目を閉じた朔洵は秀麗の手に自分の指を絡ませて、爪の先にそっと口唇を寄せる。
朔洵が横たわる寝台の脇に膝を付いた秀麗は、彼の伏せられた瞳を縁取る長い睫毛を見ていた。

「……君には大切なひとがいるんだったね」
「は?何よ急に」
「狡いな、その人……誰?」
「言っとくけどあなたとの結婚とそれは、」
「誰?」
「……父さまと静蘭。まぁ他にも沢山、皆大事よ」
「君は欲張りなんだね」
「悪かったわね……」

朔洵が、秀麗の手を握る指に力を込めた。
逃すまいと絡まる指に、秀麗の胸が音を立てる。

「私は君だけでいいのに。不公平だね」
「……あのねぇ、」
「静蘭……って、"小旋風"の事だろう?彼は元気?」

突如出た朔洵の言葉に、秀麗は驚いて瞬きを繰り返す。
「知ってるの!?」
「古い知り合いだよ。別に逢いたくはないけど…向こうも多分そう思ってるだろうな」
「…まさかあなた、静蘭が茶州にいた頃いじめたりしなかったでしょうね」
「どうだったかな……"小旋風"の話を聞きたい?」

朔洵は寝台に半身を起こし、口元に妖艶な笑みを浮かべた。

小旋風……確か燕青も初めて会った時、静蘭をそう呼んでいたのを思い出したが、秀麗は首を振った。

「静蘭が話したくない事を他の誰かの言葉で聞くのは嫌」
「……つまらないし、妬けるね。…君は彼のお願い事なら素直に聞いてしまうんだろうね」
「はぁ?なんで急にお願い事の話になるのよ」
「私は今まで生きてきて誰かにお願い事なんかした試しがないのに」
「……二胡を弾けだの髪を結えだの散々してるのは何処の誰よっ」
「だから、君が初めてなんだよ」
「わ、ちょっ…!」

秀麗は決して警戒を怠ったわけではないが、不意に腕を強く引かれてそのまま寝台に倒れ込む。

朔洵の柔らかな髪を頬に感じて見上げれば、やはり組み敷かれ身動き出来ない。

「またこういう事する〜〜〜っ!」
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