漆黒

□VELEDICTION
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幾億の血の螺旋も総ては唯一から


……月よ、
幾百幾千の夜を繋ぐ
歪な月

どうかこの漆黒の静寂を照らして。
僕の何もかもを。


"イグネ・ナチュラ・レノヴァトール・インテグラ"

それは退屈を焦がす薔薇色の炎
キミがいようといまいと
閉じた目蓋に映る世界はなんという美しさ


なのに 何故、


アノ 夜 ヘ ト 沈ム 羽 ガ ナイ。






トリニティ・ブラッド アニメ化マンセー企画第1弾/ディート編


V A L E D I C T I O N








「─で、次は何して遊ぼうか、ラドゥ?」

……無邪気な声で話を振られたラドゥは、窓の外から視線を戻した。
ディートリッヒは腰掛けていたラタンの椅子から勢い良く立ち上がり、ラドゥの目の前にすらりと立つ。

ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン、闇色の軍服を痩身に纏い、愁いを含んだ秀麗な容貌の匂い立つ様な美青年。
短生種-テラン-ながら、まるで戯れか何かの如く薔薇十字騎士団-ローゼンクロイツ・オルデン-に身を置くが、その天使の様な笑顔からは彼の真意を伺う事は出来ない。

「ああ、教皇庁-ヴァチカン-の枢機卿猊下が、お宅の皇帝陛下-アウグスタ-にとある交渉を持ちかけたんだってね。皇帝陛下は使者出すって?……ふふ、血相変えて騎士団-オルデン-に来たキミの顔が視たかったよ、"炎の剣-フランベルク-"」

ディートリッヒはヘイゼルの瞳を輝かせ、悪戯っぽく首を傾けた。ラドゥは火のついていない煙草をくわえたまま彼を睨む。
「我らが短生種-テラン-と接触するなど在り得ないからだ」
「まぁ、キミの意向は我々騎士団の目的と合致したって事で……ヴァチカンの真意は何だろうね?」
「さぁな…おおかた我が帝国と手を組んで強硬派壊滅ってところだろ」
「いいセンだね!」
ディートリッヒは笑顔になって、絹の様に柔らかな肩までの髪を掻き上げた。

「仲良しゴッコの立役者は、どうもキミの相棒-トヴァラシュ-とやらなんじゃないの?帝国直轄監察官サン」

……帝国直轄監察官-カマラーシュ-、公式役職名で呼ばれたラドゥは、僅かに表情を翳らせ片眉を下げた。ディートリッヒは興味なさげに一瞥する。

「……簡単に想像出来る反応はやめてよね」
「安心しろ、"人形使い-マリオネッテンシュピーラー-"。何が大切で最優先させるべきかぐらい、私は心得ている」
「心配なんかしてないよ?ラドゥ、キミは友情に感傷的になるタイプじゃない…そうだったね?」

人形使い、と呼ばれたディートリッヒは、天使の様に優しい微笑を浮かべた。
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