APH

□これでやっと俺たちは
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これで、やっと俺たちは――


†§§§§§§§§†


 俺は、長いことずっと一人だった。
 小さいときから一緒にいたアルフレッドも一人立ちしてしまって、他のやつらもいなくなって、気付いたら右も左も敵ばかりだった。
 でも、それが別に苦痛と言うわけでもなく、まぁ仕方がないことだと思っていた。

 でも、そのとき出会ってしまったんだ。

 彼に。

 彼はなにが面白いのか、俺のことをよく知りたがった。後に、友達にもなりたいと言ってきた。あまり必要ないとは思うが、味方は作っておいた方が良いだろう。そう思って俺は承諾した。

 俺が彼のことを想い始めるのは、もう少し後のこと。

 俺たちは結構うまくやっていたはずだった。でも、いつの日からかあまり彼がやってこなくなって、しまいには。

 要は、捨てられたんだ。

 何故?どうして?
 今までなら敵が増えたとて特に気にはとめなかった。なのに……

 どうしてこんなにも胸が苦しいのだろうか。



 あれから何年たっただろう。
 しばらく見掛けていなかった彼を、あるとき久しぶりに見た。

 他の奴と一緒だった。

 その顔はとても楽しそうで。

 俺の心は歪んだ。

 あぁ、何故こんなにも憎らしいと思うのだろう。

 あぁ、何故こんなにも愛しいと思うのだろう。

 あぁ、何故その笑顔を自分の物にしたいと思うのだろう。

 それが無理ならばせめて――


 お前の命は俺の手に。


†§§§§§§§§§†


 目の前には愛しい人の身体。
 目の前には憎らしい人の身体。
 それが冷たいのは、激しく降っている雨のせいだけではなかった。そして、もう動くことはない。
 「彼だったもの」はついさっき、こんなことを口走った。

『何故………そんなことを…なさるので…す………』

 何故?
 そんなもの、わかりきったことじゃないか。

 お前の身体は俺のもの。
 お前の命は俺のものなのだ。

「そうだろう?菊……」
 彼の腹に刺さった俺の剣を引き抜きながら、俺は呟いた。

 雨は、俺の周りだけ赤く染まった。




END
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