APH

□日常。
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「起きてくださいルートヴィヒ、掃除したいんですが」

 いつもの声で目を覚ました。その主は今日のような休日でもきっちり定刻に起こしてくる。
「休みの日くらい寝かせてくれ……」
 俺が言うと、案の定否定の答えが帰ってきた。
「そんな体たらくでよく今までやってこれたものですね。朝はちゃんと起きないといざというときに……」
「わかったわかった、起きるから!」
 あまりにもしつこいのでそう叫び、上体を起こして目をこするとぼんやりしていた視界がはっきりしてきて、同居人であるローデリヒの姿が確認出来た。
「おはようございます。さっさと起きて朝御飯を食べてくださいね。それから洗濯物はちゃんと出してください。あとは……」
「食器は流しに置いとく。わかってるって……」
 毎日続けられている会話だ。聞いていてうんざりする。
 少しばかり遅い朝食をとっていると、向こうの方からガタガタと掃除をする音がきこえてきた。つくづくマメな奴だ。
 マメといえばこの前、靴下の穴が空いているのを彼に発見されて修復された。まったく、お前はおかーさんか。
 結婚もしていないのに家に帰りたくない日が続いている。それは少なからずローデリヒのせいだ。
「はぁ…………」
 無意識にため息をついて、俺は食器を片付けた。
 たまには洗ってやるか……
 そう思った矢先、電話の呼び鈴がけたたましく鳴った。
「はいはい!」
 俺は急いで受話器をひっ掴んだ。
「もしもし」
『ルートヴィヒッ! どうしよう大停電だよーーッ!』
 その声を聞いた瞬間、俺は受話器を元に戻した。しかし、間をおかずにまたベルがなるので仕方なしにとってやる。
「はい」
『ルートヴィヒなんで切るの! 大停電だよ? 真っ暗だよ!?』
「なんで朝なのに真っ暗なんだ! 日があるだろう!」
『……? あ、そっか! カーテン開けたら良いのか! ありがとうさすがだね!』

 ガチャン。

 しばらく固まったあと、俺は受話器を再び置いた。
「どなただったんですか?」
 ローデリヒが部屋から頭だけだして尋ねる。
「フェシリアーノだ」
 短く答えると、彼はまったく、と言って小言を始めた。
「貴方って人は、なんだってあんな人と……」
 ため息を深々とつくローデリヒを無視して、俺はソファーに腰かけた。

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