献上品

初めて方程式
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医者パロ話。
信かさが付きあって一年経ったくらい。

ネタ的に色々下話多めなので苦手な方ご注意。話は一応健全ですが、殿がかなり可哀相です。





かさねは真っ暗になった外を見つめた。
テレビの音が耳に入っては抜けていく。
バラエティ番組の司会者と芸人が台本通りであろうやりとりを繰り返している。
ふかふかのソファの背もたれにもたれかかりながら、ぼんやりとテレビを見つめる。


「おい」


横柄な声をかけられ、かさねはビクっと身体を竦ませた。
恐る恐るかさねは声の主の方へと視線を向ける。

隣に座った男が新聞を畳んで此方を見つめている。

「今日は泊れるんだろうな?」

テレビの音も流れているのに、妙に男の声が響いた。
男の一言にかさねの身体はますます強張った。

「…は、い」

間を置いて、かさねは応えた。
男の方など見れるわけがない。
俯いて、膝の上に置いた己の掌をぎゅっと強く握る。

「じ、じいちゃんには…友達の家に泊りにいくって…いってる…から」

今日、じいちゃんに嘘を吐いて、家を出て来た。

友達の家に遊びに行ってそのまま泊ってくるから、夕飯とかは勝手に食べててと言って。

自分の家は、そこそこ厳しいと思う。

今まで自分には無かった事だけど、男女交際については高校に入って、じいちゃんから口酸っぱく注意しろと言われている。
全部自分で責任をもてる歳ならば、色々細かく言うつもりはないが、彼氏が出来たとしても気軽に外泊はするなと何度も言われた。

じいちゃんは彼氏くらいは、つくっても構わない様だが、
学生という自分で責任をもてない歳で気安くそう言う事はするなという事なのだろう。

かさねは確かにじいちゃんの言うとおりだと思った。

保護者が居る身でそういうことして、子供なんて出来たらシャレにならない。
子供というのは、結婚して、ちゃんと計画を立てて作るものだと、学生のかさねでもそう考えている。

でなければ親も子も不幸になるだけだ。

自分には両親が居ない。
じいちゃんはいるけれど、親の居ない苦労を、かさねは嫌という程味わった。

そのせいか、かさねは幾分か思考が現実的に育った。

自分の同級生の友達は、何人か彼氏が居る。
彼氏もいて、当然キスして、そういう…初体験とか済ませてる子も、何人もいる。

自分の友人にはまだ居ないけれど、この前隣のクラスの女の子が妊娠して高校を退学したって聞いた。

そうなるのは、御免だ。


子供が嫌いなわけじゃない。
寧ろ子供は大好きだし、早く結婚して親になりたいなぁ、とか思うけど、かさねはまだ17歳だ。
そんな理想などまだまだ先の出来事だと認識している。

高校生の身でそんな事なんて考えられない。


友達は彼氏の子供妊娠してこのまま学生婚したいなぁ〜、とかとんでもない事言っていたけど、
かさねはそこまで恋に盲目にはなれない。


…信長と付き合って、もうすぐ1年近くになる。


信長は、今まで本当に待っててくれたと、思う。

付き合って1年何もしないなんて、いまどき、あんまりないと、思う。
友達は付き合って一週間でその、…エッチしたって、言うし。


キスは、何回もした。

軽く触れるキスとか、深いキスとか。
自分にとって未知の事を教えられた。

深いキスを殿様としてるときに、密着した身体にその、男の人の熱が、服越しに押し当てられた事も、ある。


甘ったるい雰囲気で、何度も深いキスをして、普通の恋人同士ならそのままそう言う事をするんだろうと、思う。

でも、かさねは怖かった。かさねにとってそれから先は、本当に未知の世界だ。

知識は知っている。
女の子の初めては痛いって話しも知っている。


でも自分の初めては、殿様にって、もう決めている。


けれど、やはり、その、踏ん切りがつかないものだ。

色々話しに聞く、一回ヤッたら捨てられるとか、痛いの怖いとか、もし間違って妊娠しちゃったらどうしようとか。

…やっぱり、色々考えてしまうと、怖くて仕方ないのだ。



この前、殿様に言われた。

付き合って、もう一年になる。
そろそろ、そういうことをしても良いんじゃないかと。


かさねは、殿様のその要望は、至極当然だと思う。

寧ろ殿様は紳士だ。

キス以外は一切手を出さず、ずっとこの一年間、待っててくれたんだから。

友達の話しに聞く、がっつく男子とは大違い。
殿様が大人だから、余裕があるのだろうか。


かさねも、もう心に決めている。
初めては、この人が良いと、心から思っている。

それにこれ以上焦らせば、殿様がこんなめんどくさい自分を捨てて、他の女の人に行くんじゃないかと、怖い。

だから、かさねは信長にそう言われた時、黙って頷いた。



もうそろそろ、観念しなくてはならいのだ。



「先に風呂に入れ」


そう言って信長はかさねにバスタオルを押し付けた。
かさねは自分のパジャマを持ってきていたので、それを抱えてお風呂場に行く。

「お、お風呂、お、おかり、します…」

ぎくしゃくしながら、かさねは不自然に歩く。
心臓が五月蠅い。
かさねは信長の方へとちらと視線を向ける。
信長がまた新聞を広げてソファでくつろいでいる姿が映った。

細身で長い脚。
思った以上に無骨で男らしい腕。
記事を読むその伏せ目。

心臓が止まりそうになった。


今から、この人、と。


いっきに血が逆流するのを感じて、かさねは駆けこむようにお風呂場へと急いだ。


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