戦國ストレイズ

ある休日の夫婦の日常
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信かさ医者パロ話。
げろあまな夫婦の惚気話。



「殿様!お出かけしましょう!!」

「…」

今日は信長の非番の日曜日。
かさねはリビングのソファでくつろいでいる信長に鼻息荒くそう言った。

そんなかさねを信長はあからさまなしかめっ面で見つめる。

「面倒くさい。却下だ」

「ええぇ!!」

かさねの提案を一刀両断にし、信長が言った。
信長はそう言いながら読んでいる新聞のページをめくる。

どうでもいい様な記事を流し読みしている。

「だって、最近ずっと殿様忙しいじゃないですか!たまには一緒にお出かけしたいです!」

「こんな暑い中出かけるのか?冗談じゃない」

げんなりしながら信長が言う。夏も本番に入り、外は炎天下といっても過言ではない。
そんな中で掛けるのは正直勘弁願いたい。
クーラーの効いた涼しいこの部屋でゆっくり過ごした方がまだましだ。

「でも…!」

かさねがなおも食い下がる。
そんなかさねを横目で見遣った。
むう、と頬を膨らませ、大きな栗色の目が懇願するように己を見つめている。

「…」

信長はかさねのそんな姿を見てはぁ、と溜め息を吐いた。
新聞をテーブルの上に無造作に置いてかさねを再度見直す。

「…行くならどこか涼しい屋内だけだからな」

そう静かに言うとかさねの顔がぱあっと明るくなる。

「出かけるならおれの気が変わらんうちにさっさと支度して来い」

「うんっ!」

そう言うとかさねがこぼれんばかりの笑顔で立ち上がって自分の部屋に飛んで行った。
その背を見送って信長は再度溜め息を吐く。

まったく、おれもあれに相当甘いな。

そう心の中でぼやきながら信長は自身も立ち上がって携帯と財布と車のキーをどこにやったかと見まわす。

目当てのものは揃ってテーブルの端に無造作に放置してある。

かさねが準備している今のうちに車のエンジンを付けて涼しくしておくかと玄関に向かった。










「お待たせしました!」

「…」

そう言いながら準備の終えたかさねが玄関から出て来た。
そのかさねの姿に信長の眉間が盛大に寄る。

何故ならかさねはピンクのキャミソールと、相当短いスカートを穿いて、かなり露出の激しい格好をしていた。
首元には控えめのネックレスに、普段はあまりしないはずの化粧を珍しく念入りにしている。

可愛らしい姿なのは確かだが、信長にしてみればあまり好ましい格好では無い。

なんだその格好は。
肌、見せすぎじゃないのか。

「…着替えて来い」

「ええ!!」

信長の一声にかさねが声を上げる。

「なんでですか!」

かさねはふくれっ面になりながら信長に抗議した。
せっかく30分も掛けておしゃれしたのにこの言い草は流石にかさねだって寛容出来ない。

「いいから着替えて来い」

かさねが反論するので若干イラつきながら信長が言った。
腹立たしげに腕を組んで険しい視線でかさねを見下ろす。

「絶対嫌です!」

完全にへそを曲げてしまったかさねがそっぽを向きながら言う。
信長はそんなかさねの態度にますますイラつく。

「…だったら上着を着て、あとあの黒いやつでも履いてこい」

黒いやつというのはレギンスの事だろうか。なんでこんな暑い日にそんな上着を着てスカートの下に暑いレギンスを穿かなくてはならないんだ。

信長の理不尽な要求にかさねは不服そうに睨みつける。

「なら今日は一日家で休暇だ。おれの要求が飲めんなら車は出さん」

「う…!!」

信長が車に寄りかかりながらそう言った。
かさねはまた乗用車の免許を持っていない。
基本的に出かけるときは信長の車の助手席に乗せてらって出かけることが多い。

「飲む気がないのならおれは家に入るぞ」

「うう…、わかりました!着てくればいいんでしょ!」

それに今日はただ遊びに出掛けたいという理由では無い。
理由など、なんだっていいのだ。
ただ、信長と一緒に何処かに行きたかった。それだけだった。

信長は普段忙しい。
仕事も夜遅い時もあるし、院長という立場から病院に泊りこむ事も多々ある。
それでも信長は仕事が終わったらまっすぐ帰ってくるようにしてくれてるし、食事も基本的にかさねのものしか口にしない。

でも、それでも、たまには夫婦ふたりっきり水入らずで遊びに出掛けたいと思うのだ。

信長が忙しいのは知っている。仕事で大変なのも知っている。

でも、それでもほんの時々、ふたりきりで何処か出かけたいと思うのは、妻として我儘なんだろうか。


かさねは足早に自分の部屋に戻り上着とレギンスを穿いてすぐさま信長の待つ玄関に戻った。
車はすでにエンジンが掛かって居り、冷房が効いた車内で信長が腕を組んで待っていた。

「…まあ、それならぎりぎり許してやる」

いや、許してやるの意味が分からないんですけど。

信長の言葉の不可解さにかさねは眉をひそめた。

「で、何処に行く気なんだ」

信長が車に付いているナビを操作しながらかさねに問いかけた。
どうやら目的地の住所を入力する気らしい。

「え、えっと!その、実はつい最近、すっごく大きなショッピングモールが出来たらしくって、
そこなら涼しいし、一日中回って遊べるかなって、思ってたんですけど…!!」

かさねが自分のバックの中に押し込んである雑誌の切り抜きを盗み見しながらそう言った。
信長はまあそこなら涼しいからいいだろうかと、ナビで検索して目的地をそこのモールに設定した。

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