ここに迷い込んだら、プラウザバック

□羽ばたけない蝶幾度と見てきた
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ゆっくりと羽ばたこうとしている蝶。
私はそれを邪魔したい衝動に駆られた。

ゆっくりと蝶に向かって手を伸ばす私。
蝶はそのことに気付いていない。




そして、蝶は地にはいつくばった。








春もう終わりに近づいていて、気温はどんどん上がる。もうすぐ梅雨がやってくる。
今、私の目の前で羽ばたいた蝶もすぐにいなくなる。
この蝶は空を飛べない。
でも、蝶なのだ。
私にとって、とても綺麗な蝶。捕まえて標本にしておきたいくらい綺麗な蝶。

ついさっき、この青空に向かって飛び立った綺麗な蝶は私と一緒にいることを望んではいないだろう。
蝶が望むのは、9人の仲間がいて、一緒に青空を見上げることだろう。
それを邪魔するつもりは無いし、むしろ応援したい。
でも私の応援は逆に妨げになる。

蝶の翅は、まだ羽化したばかりだから。
羽化したばかりの翅に触れれば、真っ直ぐ伸びず、いびつになってしまう。






だから私は何もしない。












私が触れてしまったせいで、飛び立つことの出来なかった蝶を幾つも見てきたから。








「おーい!」




蝶は私を呼ぶ。
振り返れば、青空を背負って走ってくる蝶。




「あのさ、試合あんだ!応援来てくんねぇ?」









蝶は、私の応援を必要とする。




「……行ってもいいの?」

「俺が来てもらいてえの!」




私が邪魔してしまうかもしれないのも知らずに。




「……」
「絶対来いよ!」






「俺がカンドーさせてやっから!ゲンミツに!」





それは、私が干渉しても平気だと言っているようで。









「……うん」







その言葉を信じてみたくなった。


2008/05/22

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ブラスマイナス=ゼロ

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