ここに迷い込んだら、プラウザバック

□茶
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「あのね、土が無かったら人間は生きていけないの」


夏休みの間だけ祖父ちゃんの手伝いに来ている彼女は、今日も畑にいた。そこで彼女は俺に話しをしてくれた。


「だから、アスファルトで固めようだなんて思っちゃダメ。ねぇ、悠一郎は中学校の時に歌った合唱曲覚えてる?」

「ん?おお。たくさん歌ったよな」

「その中で"大地を褒めよ"って歌詞があるヤツ知ってる?」
「母なる大地ーってヤツか?」

「うん、そう。私はあの歌を歌ってから、土に触るのが好きになった。こうやって畑仕事がしたくなったの」



昔からじゃないんだ、と相槌打って、土の上で踊ってるミミズに手を伸ばした。


「土で汚れるのを嫌う人は嫌い」


俺の指に挟まれたミミズが暴れてる。
彼女の目が少し鋭くなった。
でもすぐに俺に微笑みかけてくれた。

「悠一郎は好き。お祖父ちゃんの手伝い進んでしてくれる人だし、泥だらけになっても気にしないで笑ってられる人だもん」

その笑顔に少し見とれていると、携帯のアラームが鳴った。もう練習行く時間だ。
掴んだミミズを土の中に埋めて、彼女に手を振って俺はグランドへ向かった。







ザザァーッ



おもいっきりスライディングをする。
ユニフォームについた土を払わずに、彼女がいる畑の方へと駆け出し、フェンスにしがみついて、こう叫んだ。



「泥だらけになっちまったー!!」



俺に気付いた彼女は、笑顔と一緒に返事をくれた。






「カッコイイじゃんっ!!」










監督に頭を握られたのは、あと数分後の話……。




2008.06.29
「僕の瞳は鮮やかな君によって色づけられてゆく」に提出

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