ここに迷い込んだら、プラウザバック

□真っ赤なトマトの実
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「あー、準さん先輩ちわっス」

チャリで本屋にでも行こうと道を走っていた。
夏らしく青空が広がっていて、入道雲かと思われる雲が視界に入っていた。
帽子被ってくればよかったと思っていると、でかい麦わら帽子に声をかけられた。

「俺に麦わら帽子の後輩はいないけど」
「準さん先輩ひどい!私ですよー!」

麦わら帽子の下から、ひとつ下のマネジが現れた。

「おお」
「どこかへお出かけですか?」
「暇潰しにな」

マネジは首から白いタオルをぶら下げていて、額には少し汗も見える。
そして緑に囲まれていて…。

「畑仕事?」
「はい!これおじいちゃんの畑なんですけど、少し借りたんです」
「ふーん」

何て言うか、夏って感じ。
こいつおてんば少女って感じだし、冬よりも夏が似合う。

「準さん先輩は、軽蔑しないんですね」
「何に」
「私が畑仕事してることにです」


「皆畑仕事してるって言うと、何で?って目で見てくるんですよ」
「……別に、いいんじゃねえの?」

「…準さん先輩良い人ですね」

麦わら帽子の下で、笑ったように見えた。

「笑ってる方が良い」
「へ?」
「…何でもない」

不思議そうな顔をしながらも、笑ったアイツは真っ赤なものを俺に差し出した。



「これ私が作ったトマトです。持ってって下さい!」


それを受け取って俺はペダルに足をかけて漕ぎ出した。
振り返らずに手を振り、本屋へと向かう。


「……甘」

トマト片手に本屋へ行くのは格好悪いから、と自分に理由をつけてトマトを食べた。
太陽の味がする。
夏みたいな、アイツが作っただけあるな。





2008.08.18
title by ひよこ屋

◇◆◇
キリ番3456でリクしてくれた方へ捧げます!
スミマセン、全然甘くないです!そして準太じゃない…。
3456打報告、そしてリクありがとうございました!
よかったらこれからもよろしくお願いします。

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