小説

□短)『ごめん』
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オレは栄口が好き。




栄口の笑顔とか、
優しいトコとか、全部好き。




でも、栄口は気付いてくれない。




じっと栄口を見てても、
栄口はニコッと笑って返してくるだけ。




その笑顔を向けられると、
もっと好きになっちゃうのに。




栄口は全然気付かないんだ。




だからオレは、皆が帰った後、
誰もいない部室で栄口を押し倒した。




栄口はびっくりした顔でオレを見て、
「な、何、どうしたの?」
なんて言っている。




オレは栄口を押し倒したまま、
黙って栄口をじっとみた。




今は笑わない。




どんどん栄口の表情が曇っていくだけ。




オレはイライラしてきて
いきなり栄口に顔を近づけた。




栄口はぐっと目をつむった。




キスはしてない。




ギリギリで止めたから。




栄口はゆっくり目を開いた。




栄口の顔が・・・すぐ近くにある・・・。




栄口は困ったように笑って、
俺の体を起こした。




「何、ホントどうしたの?
熱でもある?」




栄口といる時はいつでも熱いよ・・・。




「水谷?」




そんな顔で・・・
そんな声でオレを呼ばないでよ・・・




「栄口・・・」




「ん?」




「オレ・・・・・・」




顔が上げられない。




「何?」




「・・・・・・好き・・・・・・」




「・・・・・・え?」




「栄口の事が・・・っ」




オレは顔を上げた。




栄口は・・・・・・




驚いた顔で・・・




でも無表情で・・・




オレを見ていた。




・・・フられた。




オレは泣きそうになって、
情けない泣き顔を見られたくなかったから、
栄口をギュッと抱き寄せて、
栄口の肩に頭を乗せた。




「水谷・・・」




その声でオレの名前を呼ばないでって・・・




「何も言わないで・・・・・・」




「・・・・・・・・・・・・ごめん」




何も言うなって言ってんのに・・・・・・




こらえていた涙が栄口の肩を濡らした。




「・・・ごめん」



  ---End---

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