キリリク部屋

□潤んだその瞳が…。
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「これ付けて。」

今は部活の休憩中。幸村は突然、どこから取り出したのか分からないが猫耳を真田に見せた。

「む、何だこれは?」

「見たら分かるでしょ?猫耳だ。」

「何故、俺がそんな物を付けねばならんのだ。」

「フフ、可愛いからに決まってるじゃないか。」

「そんな訳なかろう!!」

「へぇ、副部長の猫耳?!俺も見て見たいッス!!」

「あ、赤也まで…。」

だってそんなん一生に一度見れるか分からないじゃないッスか!!

「誰がなんと言おうとそんな物は付けん。」

「…分かったよ。」

幸村は少し落ち込んだ表情で真田を見た。

「幸村…」

はっ!!いかん、この顔に何度騙された事か!!

「その様な顔をしても無駄だぞ。」

「やっぱダメか。」

今回は仕方ないね。あまり真田が嫌がる事しちゃうと泣いちゃうかもしれないしな。

「分かったなら練習再開だ。」



「幸村…」

「仁王か。どうしたんだい?」

「それ付ける良い方法があるぜよ。」

仁王は猫耳を指して言った。

「本当か?」

「あぁ。お前さんになら出来るナリ。」

というかお前さんにしか出来んよ。

 
「…あぁ、その手があったか。じゃ俺ちょっと抜けるから。」

「幸運を祈るぜよ。」



「仁王、幸村はどうした?」

「ん?幸村なら先生に呼ばれてたから職員室に行ったんじゃないか?」

「む、そうか。いつもなら俺に一言言って行くのだが。」

「急用だったみたいぜよ。」

「…そうか。」

「何か気になる事でもあるんか?」

「いや…先程の事でな。」

「猫耳の事か?」

「…うむ。」

「気になるなら付けてやれば良かったじゃろ。」

「…俺とてプライドはある。」

まぁあんなん男やったら付けたくない気持ちは分かるのぅ。

「まぁ、あんまり気にしなさんな。幸村も気にしてなかったみたいじゃから。」

「そうか。」

真田はホッとした表情で練習に戻った。

ん〜プライドか。やっぱ幸村には教えん方が良かったかの。


一方、幸村は…

「フフ、準備は整った。後は真田を連れて来るだけ。」




「集合!!今日は此処まで解散!!」


「はぁ疲れたぜぃ。」

「丸井先輩はもう少し疲れた方が良いッスよ。」

「何だと?どういう意味だ赤也!!」

「まぁ、落ち着けよ。」

「相変わらず五月蝿い奴らだ。」

 
いつものように部室に入ろうとしたレギュラー陣だったがドアを開けて待ち受けていたものは!!

「フフ、いらっしゃい。」

窓を黒の布で覆い、明かりは蝋燭の火だけという何とも不気味な空間になった部室だった。

「な、なんだこれは?!」

「真田、これもってその円の中に入って。」

幸村は皆の思いを代表して言った真田の問いを軽くシカトし用件だけ伝えた。

「は?」

「いいから黙ってしろ。」

「む…」

「じゃそのままジッとしてて。」

幸村は何か訳の分からない言葉を発し、同時に蝋燭の火も消えた。

「な、何も見えないぞ。」

「弦一郎、こっちだ。」

「蓮二?」

柳が真田を抱き寄せた瞬間、部室の電気がついた。

「フフ、上手くいったみたいだね。」

そこに居たのはまさしく幸村が願って止まなかった猫耳姿の真田が。オマケに尻尾のオプション付き。

「?」

「げ、弦一郎…」

「む、どうしたのだ?」

「…幸村に聞いてくれ。」

柳はそそくさと部室を出て行った。

「幸村何なのだ?」

「ちょっとした実験だよ。」

ホントは完全に猫にして俺が飼うつもりだったんだけど、何を間違ったのか中途半端になっちゃった。

 
「成功したみたいやのぅ。」

「まぁね。」

中途半端になった事はだまっとこ。

「一体何なのだ?!」

「鏡見てみんしゃい。」

「む…耳が猫?」

「真田、おいで。」

幸村は真田の尻尾を引いた。

「痛っ!!何をするのだ!!」

「そんなに強く引っ張ってないんだけど。」

「尻尾は敏感なんじゃなか?」

「そんな事はどうでもいい!!早く元に戻さんか!!」

「ごめん。戻し方分からないんだ。」

本当は分かるんだけどせっかく可愛いのにすぐ元に戻すのは勿体無いじゃないか。

「え…」

「だから分かるまでそのままでいて貰わないといけないんだ。」

「………。」

「そう落ち込みなさんな。その姿も似合ってて可愛いぜよ。」

「…嬉しくない。」

真田は元に戻れないかもしれないという不安から涙目になっていた。

「真田君、大丈夫ですよ。私も一緒に調べますから。」

多分、幸村君は戻し方を知っているのでしょうが。

「…有り難う。」

「あっ!!真田副部長猫耳付けたんスね!!」

片付けを済ませた切原が部室に入ってきた。

「…好きで付けているわけではない。」

「どうしたんスか?そんな落ち込んで。」

 
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