キリリク部屋

□お前に向けて
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「何故、お前が此処に居るのだ?」

「手塚の付き添い。」

ていうのは嘘だけど。
勿論、幸村君に会いたいからだよ。


此処は立海大附属中学校。
手塚と不二は今度の練習試合の打ち合わせに来ていた。


「大石はどうした?」

「勿論、学校にいるよ。青学のだけど。」

「まぁ、良いじゃないか。じゃ始めようか。」

幸村は大石でも不二でもどちらでも興味は無いように言った。

「む、そうだな。こうしている時間が勿体無いな。」

「で、これなんだけど…」

四人で話し合いが始まった。

「………。」

面白くないね。幸村君は真田と話してばかりだし。

「ねぇ…」

「ん?どうした?」

「真田には言ってないよ。」

「む…。」

「どうした?」

今度は手塚が問い掛けた。

「手塚にも言ってないんだけど。手塚は真田と話してれば?」

「そうだな。」

手塚は真田に話し掛け二人で話し始めた。

「もう身体は大丈夫なの?」

不二は心配そうに幸村にたずねた。

「あぁ。もうすっかりいいよ。ありがとう。」

幸村は微笑みながら答えた。

「………。」

それを隣で複雑そうに見ている真田。

 
「真田?どうしたんだい?」

「え?いや、何も…。」

「フフ」

そんな不安そうな顔も可愛いね。

「………。」

二人して見つめあっちゃって。許せない。

「もう、今日はこの辺で良いだろう。」

「そうだね。じゃあ楽しみにしているよ。」

そして手塚と不二は帰って行った。

「そんな顔してどうした?」

幸村は真田の頬に手を当てながら言った。

「…なんでもない。」

「そう?」

「うむ。」




そして、時は流れ練習試合当日。

「待ってたよ。」

不二は幸村に熱烈な視線を送っている。

「待たせて悪かったね。じゃこっちは準備するから。真田、行こうか。」

幸村の態度はそっけない。

「………。」

いつもいつも真田、真田って。

「う、うむ。」

真田がたじろぐのも無理はない。不二が恐ろしい形相で此方を睨んでいるのだ。

「気にしなくていい。」

幸村は真田の肩に手を回し引き寄せた。

その瞬間不二は理性を失った。

「真田、ちょっと話があるんだけど。」

「む?俺か?」

「そう。」

「何だ?」

真田は他の者を先に行かせ問い掛けた。

 
「ねぇ、幸村君とはどういう関係?」

「は?どういう関係も何も部長と副部長…」

「ふ〜ん。部長と副部長の仲にしてはちょっと仲良すぎないかな?」

「そ、そんな事はないぞ。」

「見つめ合ったり肩を抱いたり…」

「お、お前の勘違いだ。」

「フフ、動揺してるね。」

「その様な…」

「じゃ協力してくれない?俺が幸村君と付き合えるように。」

「え?」

「してくれるよね?」

「そ、それは…」

真田は困ったような表情で不二を見た。

「出来ないの?」

そりゃ出来ないよね。見るからに真田も幸村君の事好きみたいだし。でも幸村君を手に入れるのは僕だから。

「む…」

「弦一郎、もう試合が始まる。話なら後でするといい。」

「蓮二…」

真田は心底ホッとしたのか安堵の表情を見せた。

「良いところだったのに。」

「ん?何がだ?」

「もういいよ。真田、考えておいてね。」

不二はそれだけ言うと去っていった。

「弦一郎、大丈夫か?」

「うむ。」

大丈夫ではないだろう。そんな泣きそうな顔して。

「さて、行くか。」

「…そうだな。」



ー試合開始ー

「不二対赤也か。因縁対決ちゅうわけか。」

 
試合はみるみるうちにヒートアップしていった。

「今度こそ潰してやるよ!!ヒャーヒャヒャヒャヒャッー!!」

「僕に二度は通用しない。」

フフ、変わりに君が潰れて貰うよ。

「それ!!」

「危ない!!」

【バシッ】

真田目掛けて飛んできたボールを幸村が素手で取った。

「ごめん。まだ練習途中で完成してないんだ…ナックルサーブ。」

不二は悪びれた様子もなく謝った。

「ナックルサーブだって?!」

「フフ、じゃあ次行くよ。」

不二は何度となく真田目掛けナックルサーブを打った。

「赤也、早く試合を終わらせろ。」

「ウィッス!!」

結局、サーブはすべて外した不二の負けとなった。

「負けて残念だったけど今度は幸村君と試合してみたいな。」

「え?俺とかい?」

「そう。それで僕が勝ったら一つお願い聞いてくれない?」

「お願いにもよるかな。」

「簡単な事だよ。真田を僕に頂戴。」

「…分かった。但し俺が勝ったら俺のお願いも聞いて貰うから。」

「フフ、いいよ。手塚、ごめんだけど幸村君と試合するから邪魔しないで欲しいな。」

「…分かった。」

 
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