キリリク部屋

□どう足掻いてももう遅い
1ページ/3ページ

今日は晴天。
最高のテニス日和である。


「弦一郎、先程から落ち着きがないな。どうかしたか?」

「む、いや別に…。氷帝はまだか?」

「まだ時間になってないのだから来るはずないだろう。」

「そうか…。」

「フフ、そんなに試合がしたいなら俺が相手になってあげるけど?」

「え?う、うむ…」

「俺じゃ不満かい?」

「そ、そんな事はない!!」

「じゃあどうする?」

「いや、今はいい。」

真田はそれだけ言うと部室に戻った。

「弦一郎らしくないな。いつもなら嬉々としてコートに行くのだが。」

「何か心配事かな?」

「心配事なら俺に相談に来るはずだから違うだろう。」

「何その自信…」

幸村は冷ややかな目で柳を見た。

二人がそうこうしているうちに氷帝陣が現れた。

「よう。来てやったぜ。」

「フフ、ご苦労様。」

「よく来たな!!」

何そのテンション…

「どうした?弦一郎。そんなに興奮して。」

「い、いや…すまん。」

「そんな事より早く準備してきたら?」

「あ、あぁ。」

跡部達も真田の異様なテンションに戸惑っていた。ある一人を除いては…。

 


「さぁ、始めようか。」

「まぁ、待て。いつもしているやり方じゃ面白くねぇ。今回は指名式にしてみようぜ。」

また訳の分からん事言っとるのぅ。

「提案じゃなくて決定なんですね…。」

「いつもの事だろぃ。」

跡部が意味不明な事を言うのはよ。

「まぁ、いいよ。それで指名式ってどうするんだい?」

「アーン?対戦相手を指名して試合するに決まってんだろ?」

「誰が指名するの?」

「俺さ…」

「却下。普通にじゃんけんで勝った人から指名して行く。それでいいね?」

「うむ。いいだろう。ではじゃんけん開始だ。」

【じゃーんけーんぽん!!】

「フフ、俺と柳と仁王、宍戸が勝ったね。」

「何で俺様が負け…。」

跡部は負けた悔しさに現実逃避。たかがじゃんけんで全くもって情けない。

「むぅ負けてしまった。」

「そうやなぁ。でも俺は負けて良かったで。」

「何故だ?」

「あそこ見てみ。」

「む?」

「じゃんけんでまだ勝負ついとらんやろ?多分、後20分ぐらいは続くやろなぁ。」

「だから何なのだ?」

「ホンマに真田は鈍感さんやな。その間、一緒におれるやろ?」

「む、そうか。」

 
真田は嬉しそうに微笑んだ。

「ホンマ可愛えぇな。もうちょっとこっちにき。」

こんな短な時間でも喜んでくれるっちゅうことは相当寂しい思いさせとるんやろな。

「う、うむ///」

真田は忍足にぴったりに寄り添うように隣に立った。


「何あれ。」

「分からないが弦一郎の頬が朱に染まって…」

「普通に照れてるって言えねぇのかよ。」

「でもなんかさぁ…あんな真田見たことないから新鮮だよね。」

「あぁ、可愛いな。」

「俺そこまで言って無いんだけど。」

「そうか。でも俺はそう思ったから言ったまでだ。」

「いや、俺も思ってるけどさ。」

「では最初からそう言えばいいんだ。」

「けど何で真田照れてんだよ?」

「「さぁ?」」

「まぁ兎に角試合始めないとね。」

「あぁ、そうだな。」



「お取り込み中悪いんだけど、終わったから始めるよ。」

「別にえぇで。」

ピッタシ20分やったなぁ。まぁ、ええけど。


最初の対戦は仁王対樺地。

「またえらいな組み合わせやな。」

「うむ、興味深いな。」


「俺達はそっちの手の方が興味深いよ。」

「そうですね。真田君にしては珍しいですね。」

 
「本人はあれでも隠してるつもりだがな。」

「チッ、なんか気にいらねぇ。」

「まぁ…ね。」

真田があんなに可愛かったなんて。もっと早く気付けば良かった。



「もう、そろそろ終わりやな。」

「うむ。仁王も樺地のコピーには悪戦苦闘していたがまぁ最後は勝てたのでよしとする。」

「そうやな。樺地も仁王相手にようやったで。」

「うむ。」




「さて、次の試合は宍戸対ジャッカルだ。」

「ほう。今回は長引きそうだな。」

「そやな。」


「弦一郎…」

「む?どうしたのだ?」

「少し話がしたいのだが。」

一つ可愛く見えると全てが可愛く見えてくるとは本当だな。このような会話は何百回としてきたというのに。

「なんだ?」

「…まず手を離さないか?」

「何故だ?」

「あぁもうじれったい!!ちょっと真田こっち来て!!」

幸村は無理矢理、手を引っ剥がして立海側のベンチに連れてきた。

「どうなってんの?」

「は?」

「だから今の状況は何?」

まさか恋人とかじゃないよな?

「1対2で宍戸が勝ってる?」

「「「「は?」」」」

「な、何か間違っているか?」

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ