キリリク部屋

□親友≦恋人
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俺から告白して早くも1ヶ月が過ぎようとしていた。

今の俺と弦一郎の関係はテニス部の大切な仲間であり親友であり…そして恋人だ。

だが時折恋人なのかと不安になる時がある。
その不安というのも俺達の関係は親友から恋人へ変わったものの何一つ進展がないということ。

弦一郎の恋人になる前はただそばにいられればいいと思っていた。辛くてもずっとそばに…。
しかし、俺もそこら辺の人間と変わりないらしい。弦一郎の恋人になれた事で欲が出てしまった。
もっと触れたい。俺だけを呼んで見つめて欲しい…。
まぁそんな事が叶う筈もないんだが。

【ガタン】

「ん?」

「す、すまん。」

「弦一郎、来ていたのか。」

俺は弦一郎の姿を見るだけで頬が緩んでしまう。

「うむ。何か考え事をしているみたいだったのでな。そっとしておこうと思ったのだが…。」

「構わない。弦一郎がそばにいるのに他に考え事なんて出来ないさ。」

その考え事というのも弦一郎の事なんだが。

「そうか。」

弦一郎は目を逸らし反対側を向いた。恥ずかしがっているのだろう。

「弦一郎…」

「そ、それにしてもお前は少々たるんどるぞ。」

話を変えられたか。

 
「何がだ?」

「お前は最近よく頬が緩んどる。部活の時それでは部員に示しがつかん。」

「そうか?」

流石、弦一郎と言ったところか。

「そうだ。あっ、少し席をはずす。」

そう言って弦一郎は教室を出た。
何の用で出て行ったのだろうか?

「すまんな。」

「どうかしたのか?」

「仁王が窓から見えたのでな。少しばかり注意をしてきたのだ。」

「あぁ。遅刻して来た事か。」

「うむ。…それにしても蓮二はコロコロ表情が変わるな。」

「変わっていたか?」

「俺が帰ってきた時不安そうな顔をしていた。」

「はぁ…弦一郎には全てお見通しだな。」

「やはりか。伊達に何年も親友をしていない。」

しん…ゆう?

「どうした?」

「………。」

「そんな不安そうな顔をしなくとも俺はずっとお前のそばにいる。」

「…それは親友としてか?」

「え?」

「親友としてずっとそばにいてくれるのか?」

「………。」

弦一郎は俯いてしまった。

「すまない。困らせたかった訳じゃないんだ。」

「親友として…」

「え?」

親友としてと言ったか?ではあの告白は?俺だけが恋人だと思っていたのか?

 
「…の方が蓮二はいいのか?」

「え?」

唖然としていてよく聞き取れなかった。

「…俺は恋人としてがいいのだが…。」

「弦一郎…」

「…蓮二が親友としてがいいのだったら俺は…」

「弦一郎、俺がどんな思いで告白したと思っている。俺は親友に戻る気などない。」

「そ、そうか。」

弦一郎は安心したように薄く笑った。

「恋人としてずっとそばにいてくれるんだな?」

「うむ。」

「では証が欲しい。」

「証?」

俺は机に肘を付き顔を乗せ、顎を少し前に出した。
「れ、蓮二?」

前に座っている弦一郎は訳が分からないのかキョトンとしていた。

「ん」

もう一度顎を前に出した所で意味が分かったのか顔が真っ赤になっていた。

「れ、蓮二、いや、その…」

弦一郎は顔を真っ赤にさせ、言葉はしどろもどろになり目は宙をさまよっていた。
俺はそれでも黙って弦一郎の行動を待った。

「…チュッ」

一瞬だけだったがしっかりと触れた唇の感触に俺は泣きそうな程感動した。

「…ありがとう。」

俺にはこれを言うのが精一杯だった。

「礼など必要ない。俺も蓮二のその笑顔を見れただけで満足だ。」

 
弦一郎は綺麗に微笑んでくれた。

「それにこれは証となるのだろう?」

「そうだな。では俺も弦一郎に証をやらなければいけないな。」

「む?…んっ」

やはり何度しても感動する。

「受け取って貰えただろうか?」

「…うむ///」

「永遠とは言えないができる限りずっとそばにいる。…好きだ、弦一郎。」

「俺も…」



俺はこの日を忘れはしない。
必死にこたえてくれた弦一郎を。
ずっとそばにいるという証を。



いつまでも、いつまでも…。





END
あとがき


 
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