短編3
□天然タラシとわたし
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《天然タラシの日常》
「ううあぁぁ〜〜・・・」
だらけきったうめき声が広い部屋に虚しく霧散した。
もそもそと、ひたすらだんごを食べ続けていたフェリスがちらりとそちらを向いた。
「なんだライナ。陣痛でも来たか?」
「・・・うん、今ならなんか産まれそう」
「そうか頑張れ。ヒッヒッフーだぞ」
「なにそれ?」
「・・・気合いの呪文ではないか?」
「なる」
「違います!」
顔を真っ赤にして、耐えられなくなったキファは二人の会話に割り込んだ。今ライナに手渡すはずの書類がくしゃりと音を立てた。
ライナは半分死んだような眼でキファの方を向き、
「あ、キファその書類できた?」
先程の話題はもう終わったらしい。フェリスも何も言うことはないらしく静かにだんごに専念し始めた。
キファはそんな二人に半分呆れつつ、自分も頭を切り替える。
「もうちょっと。先にこっち渡すね」
「さーんきゅ」
ライナはすっと引き締まった顔になり、真剣に書類を読み始める。今後の動向を模索しているのだ。キファは文献をまとめながらちらりとライナの横顔を見てはにやけるのを我慢する。
「ん〜」
またライナが唸る。
壁にぶち当たることは専らだ。むしろスムーズに事が進んだ例しがない。だからライナは少しでも負担がない方法を一生懸命考えているのだ。
「どうすっかな〜」
「ふむ・・・まあおまえが無い知恵絞ったとしても事態がそう良くなるわけでもあるまい。もうさっさとやめてだんごを食うのだ!」
また、フェリスが顔を上げて、そんなことを言う。ライナは半眼になって、
「あのなー・・・はぁ、いいや。おまえはいいよなぁ、何も考えてなくて」
皮肉混じりの言葉に、フェリスはいつものように剣を抜くでもなく、大きく頷いてすごいことを言い放った。
「うむ。考えるのはおまえの仕事だろう?私はおまえの背中を守るだけだ」
「いや、そうだけどさ〜」
キファはぎょっとした。危うく、今フェリスさん自分が何て言ったかわかってる!?と叫び出しそうになった。