NOVEL 海賊
□Time works wondersV:サンジ〜恋と海賊・料理人の憂鬱
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午後の遅い時間のこと、サンジがキッチンの扉を開けるとナミが手すりにもたれて下を見下ろしている姿があった。
「ナミさん?どうしたんですか、こんなところで。」
「しーっ。見て、ルフィがゾロの手当てしてるのよ。」
「…は?」
にこやかに指さす先に目をやると、確かにマストのすぐ下あたりにこの船の船長と剣士がなにやら神妙な面持ちで向かい合わせに座っている。
「手当て?あいつが?不器用そうに見えるけど…。」
「ふふふふ、そうよ。絶対今に変なことになっておもしろいだろうからここで見てるの。」
「…はあ…?」
よほどヒマなのだろうか。そう思ったが楽しそうにしているナミにまさか言えるはずもなく、なんとなく自分も一緒にそっちを見やる。
そこでは上半身裸のゾロの胸にペタペタと無造作に触れているルフィの姿。
ここからでは角度が悪くてよく見えないが、あそこには通常ならまだ絶対安静が必要なほどの大きな傷が刻まれているはずである。
なんだってあんなところでとか、あの傷からはおそらく膿やらなにやら出てるんじゃないか、気持ち悪くないのかよとか、だいたいそんなに触って雑菌が入ったりしないのかとか、様々な疑問がサンジの脳裏をよぎる。何より疑問なのはそんな二人の姿をいかにも幸せそうな顔で見つめるナミだった。
自分がこの船にのったのは、もちろんオールブルーをこの目で見るためであるし、あの一見子供じみた船長の器のでかさが気に入ったからでもあった。だが、この気が強く美しい航海士の存在もやはり無視できない理由の一つではある。
要は一目ぼれというやつだ。自分のふざけた口調のせいか誰も本気とは思っていないようだが、まあまだ知り合ったばかりだしそう思われていたほうが気楽でいい。
そのうちきちんと伝えるチャンスもあるさ、そう思っているのだが…。
まさかあいつらのどっちかに惚れてるんじゃねえだろうな?
ゆったりと微笑むナミの横顔を盗み見ているとそんな不安が頭をもたげてくる