NOVEL 海賊
□Time works wondersW:ビビ〜殺し合い
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「で、お前も賞金稼ぎ達とやりあったのか?」
そんな疑問をウソップがルフィに向けたのは遅い朝食の席でのことだった。
のんびりとした空気の中ビビだけがびくりと緊張に背筋を伸ばす。
ウソップがフォークで指した先はルフィの頬に残る大きな傷で、それが誰によってつけられたものかビビは知っている。
「いやー?オレ、寝てたしよ。」
もごもごと口の中のものを咀嚼しながらルフィがウソップのほうに顔を向ける。
「じゃあ、それどうしたんだよ。血にじんでるぞ。」
眉をしかめて告げるウソップの声に全員の視線がルフィの頬に注がれる。ルフィも頬にやった手にうっすらとついた赤を確認してむぅとうなり声をあげた。
その手を隣に座っているゾロに差し出してみせる。
「また、傷開いちまったよ。ゾロ、なんとかしろ。」
「…ああ?知らねぇよ。ナミに薬でもつけてもらえ。」
「さっきつけてもらったばっかりだ。すぐ開いちまうんだよな。なんとかしろ。」
「なんとかって、触るからなおんねぇんだろ。ガーゼでもなんでも貼っておきゃいいだろが。」
「じゃまくせぇじゃん。」
「…俺が知るか。」
顰め面で言いつのるルフィにうるさそうに一瞥をなげてゾロはパンに手をのばす。その剣士の長い指先を目の端で追いながらビビのフォークを握る手はじっとりと汗ばんでいた。
脳裏に昨夜の光景が鮮明に甦る。いや、正確に言えば昨夜からその光景が頭から離れることはなかった。
‘殺す気かァ!!!’
‘ああ、死ね!!’
壁をくだくほどの拳をためらいもなく仲間に向けるルフィ。
‘このウスラバカが!!!死んで後悔するな!!!’
対する剣士も賞金稼ぎ百人を相手に決して使うことのなかった三本目の刀を抜いていた。
二人の目にはっきりと浮かんだ殺意の色をビビは寒気と共に思い出す。