NOVEL 海賊

混ざり合う熱(R15) 
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久しぶりに宿に泊まることになって一番嬉しいことは、実はゆっくり風呂に入れることかもしれない。
少々のぼせ気味の頭をタオルで拭きながらゾロはバスルームのドアを開けた。

こじんまりとした部屋にはベッドが二つ並んでおり、その片方では先に風呂から上がったルフィが退屈そうにあぐらをかいている。
元々宿に泊まる時は自分とルフィが相部屋になることが多かったが、所謂恋人の関係になった今回は当然のように二人が同じ部屋にまわされた。

ぽたぽたと雫を落としながら薄暗い部屋を横切ろうとするとルフィが無言で腕を差し伸べてきた。その意味するところを察して近寄って唇を重ねる。こんな風に無言でねだってくるなどめずらしいなと思いながら。いつものルフィなら‘なあ、ちゅーしよう’などとうるさくせっついてくるというのに。

初めてキスをしてから二週間あまり。すっかり互いに慣れたタイミングで唇を離す。自分の髪から落ちた雫がルフィの頬にかかるのを手で払ってやり、着替えるために背を向けた。その背にルフィの声。

「なあ。」
「なんだ?」
「なんでこの先はやんねぇんだ?」
「先?」

ふりむくと不満そうに自分を見上げているルフィとまともに目があった。
―ああ、先、ね。
天井を仰ぎ見てため息をつく。

「―やりてぇのか?」
「あたりまえだろ。…ゾロはしたくねぇのか?」
「…そういうわけじゃねえけどな。」

我ながら歯切れの悪い答えに思わず眉をしかめる。ルフィもやはり唇を突き出して不満そうな表情をしている。
仕方なく腰にタオルを巻いたまま空いているベッドに腰を下ろした。
手にしたもう一枚のタオルで頭を拭いてからルフィに目を向けると、体をこちらに向けて真剣な顔で聞く態勢に入っている。とても適当なことを言ってはぐらかせる雰囲気ではない。

再び嘆息して観念するとその顔を見つめながらゆっくりとゾロは告げた。

「…俺はお前を抱きたいんだよ。」
「?」
「お前だって、される側は嫌だろ?」

ルフィに触れたいと思う気持ちは当然ある。
けれども、この負けず嫌いがいくら自分にでも簡単に体を預けるとはどうしても思えなくて、どうしたものかなと思っていたのだ。
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