NOVEL お祝い

ハピネス
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ケーキの上の赤いイチゴはなんとなく幸せを連想させる。

だからチョッパーはケーキのイチゴは最後に食べる。
一番端の尖った部分からゆっくりと食べ進んで、更に後ろの生クリームたっぷりのところも注意深くフォークで切り崩す。バランスを崩した柔らかなスポンジがひっくり返ってしまわないように細心の注意を払いながら。

そうやって四角く残されたケーキの柱の上には今つやつやと真っ赤なイチゴが鎮座ましましている。
何かをやりとげた充実感と共にチョッパーは一つため息をついてそのイチゴを眺めた。

さて、ここからが問題だ。

せっかくここまできたのだからイチゴは一旦脇によけて先にケーキのスポンジ部分を食べてしまうべきか。いや、それともイチゴを食べて最後にケーキにするべきか。いっそこのままイチゴとケーキを一気に口に入れて両方の味を同時に味わうというのも捨てがたい。

楽しかった誕生日パーティーの最後を飾る大好きなイチゴのケーキを前にしてチョッパーは大いに悩んでいた。

さっきまで様々なご馳走が並んでいたテーブルの上は一度すっかり片付けられ、辺りにはサンジが丁寧に入れてくれた紅茶の香りが漂っている。談笑するクルー達をちらりと見渡してからチョッパーは心を決めてフォークを握りなおした。

その時。

「なんだ、チョッパーはイチゴ嫌いだったんか?」

右隣に座っていたルフィがそう言ったかと思うと、指でつまんであっという間に大事にとっておいたイチゴを自分の口に放り込んでしまった。

「…あ……。」
「むぐ?」
「…おい、ルフィ…、」

諌めようとしたゾロが口を開くのと同時に、ゴゴゴゴゴン、と派手な音をたててナミのクリマタクトとサンジのかかと落としがルフィの脳天に炸裂した。
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