NOVEL お祝い

ぷれぜんと
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「なぁなぁ、オレさもうすぐ誕生日なんだ。」

ある日の夕食の席で突然ルフィが隣に座っているゾロに向かってそう言った。
クルー達はテーブルから顔を上げて、ああもうそんなころになったのかとお互いの顔を見合う。
2月のロビンから始まって、5月までこの海賊団では丁度一月に一度のペースで誰かの誕生日が巡ってくる。
航海の合間上陸した島でちょっとしたプレゼントを見繕っておいたり、時間があればパーティーをして騒いだり、にぎやかで慌しい日々はあっというまに過ぎていく。

「あぁ…そういやそうだな…。なんだ急に。欲しいもんでもあんのか?」

手元のグラスに酒を注ぎながらゾロはのんびりと答えた。豆のサラダを一息でたいらげたルフィはこくこくと幾度か頷いて嬉しそうに笑って続ける。

「あのさ、次の島ついたら、やらねぇ?」

あっけらかんと言い放たれたその言葉に部屋中の空気がぴしりと音をたてて固まった。

「…ちょ…」
「ああ、別にかまわないが。」

立ち上がりかけたナミの声にかぶってゾロの平然とした声が部屋に響く。ナミは椅子から半分腰を浮かせたままであんぐりと口をあけた。
まさかゾロまでがこんな所でその話を続けようとはさすがの航海士にも予想外のことだったらしい。
困惑するクルー達をよそにゾロはルフィに顔を向けて少し首をかしげる。

「そんなもんでいいのか?誕生日。俺は楽でいいけどな。」
「いいーよ、だってすっげぇ久しぶりじゃん。」
「―まぁな。」

((((……久しぶりなのか…))))

「船じゃ思いっきりできねぇもんなぁ。」
「そりゃそうだ。」

((((そう…なのか………???))))

赤裸々な会話にクルー達の中の何人かは下を向いたまま心の中だけで静かに相槌を打った。
和やかなはずの夕食の席で図らずも友人達の寝所事情を聞かされるハメに陥った彼らは、つっこむタイミングも見事に逃してしまい複雑な気持ちでもそもそと食事を続けている。
そんなぎこちない沈黙に気づく様子もなく当の本人達はまったくいつもの調子で会話を続ける。

「お前がそれでいいならいいけどな。―泣いても知らねぇぞ?」

ゾロはグラスを片手ににやりと片方の口の端を上げてみせた。

((((おいおいおいおい…))))

「ゾロこそ。覚悟しとけよ。」

にぃぃとルフィもソースで汚れた口元を吊り上げて不敵に笑い返す。

((((えぇ…?………えええええぇぇぇぇ!???))))

その言葉にクルー達の動きが申し合わせたようにピタリと止まった。

(…ちょ…待って。それって…ええ?そうなの??)
(あら、意外。)
(聞こえねぇ。聞こえねぇ。おれは何も聞いてねぇぞ…。)
(はーん。…まぁ、麦わらだって男だしな。…そーゆーのもありかね。)
(…あぶねぇっ!一瞬想像しちまうとこだったぜ。クソ気色悪ぃ!!)
(ゾロとルフィは仲良しだな〜。)
(…デザート、まだでしょうかね?)
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