NOVEL お祝い
□やがて つながる
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Luffy〜you mean the world to me
村にいるころ世界っていうのはうんと遠くにあるもんだった。
海賊王の夢は海のずーっとずーっと向こうにあったし、会いたい人も見たい物も全部どこだかわからないような遠いところにあった。
わくわくするような冒険とか。見たこともない珍しいものとか。シャンクスとかエースだって。
オレとおなじとこを見てる奴はいなかったし、オレとおなじものを見たいって奴もやっぱり一人もいなかった。オレがいる場所でオレは一人きりだった。別にそれがイヤだったってことじゃねぇんだ。オレはマキノも村の人達も本当に大好きだったから。
ただ、そこはオレの思ってる「世界」じゃなかったってだけだ。
どっかにはあるけど、今自分の手の中には無いもの。いつかどっかでさわれるもの。世界ってのはなんかそんな感じだったんだ。
そーゆーもんだと思ってたし、そーゆーほうがおもしれぇような気もしてた。
だからさ、お前に会ってびっくりしたよ。
ゾロ。おまえはオレとおんなじもん見てる。お互い目に映ってるものは全然違うのにな。
おまえは海賊王なんて全然興味ねぇだろうし、おまえの目にはシャンクスもエースの背中も映ってねぇ。オレもお前が見てるあの鷹の目のおっさんのことなんてどうだっていいし。
なのにおんなじところを見てるんだ。ずっと先のどっか。でも確かにあるその場所を。フシギだよな。
そんな風にさ、自分の隣で自分とおんなじ方向を見てる奴がいるってのはなかなかいいもんだな。
どっか遠くにあるはずだった世界がいきなりうんと近くなったような気がしたよ。
おんなじもの見たりさ、こうやってホントに本気のケンカしたりさ。
悪くねぇなぁって思うわけだ。
おまえに本気で拳を叩きこむ時、おまえが容赦なくオレを斬ろうとしてくる時。
その眼の色とか斬られた痛みとかオレの手に伝わる骨の軋みとか。
やっぱり世界がうんとリアルにうんと近くに感じられる。
だからさ、なぁゾロ。
こうやってケンカしたり、別々のもんを見ながらおんなじ場所を見たり、オレ達とは違うけどやっぱりすげぇ夢持ってるあいつらと笑いあったり騒いだりしながらさ。
なんかよくわかんねぇんだけどそんな感じで。
ずっと、一緒に行こう。