倉庫

月光
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また、夜中に目がさめた。

部屋の中を見回すと皆ぐっすりと眠っている。きっと自分が眠りにおちてからそれほど時間はたっていないのだろう。きっと、また夜明けまでの長い時間を眠れないままやりすごさなくてはならない。
ルフィはうんざりとした気持ちで起き上がるとそっと足音を忍ばせて外へと続くドアへと向かった。

そうっとそうっと皆が起き出さないように静かにドアを閉める。

外へ一歩踏み出すと眩しいほどの月明かりに照らされた草木が昼間とは違った静かなくせにやけに生々しい佇まいをみせていた。

「………すげー…。」

誘われるようにふらりと歩を進めてぼんやりと辺りを見回す。月の光が作りだす影は太陽のそれとは違い境界が曖昧でなんだかひどくよそよそしい。
自分の存在が場違いのような気がして、知らず息をひそめているとゆらりと影の一つが揺れて声をかけてきた。

「眠れねぇのか?」

反射的に身構えようとしてその声の響きが馴染みのあるものであることに気づく。

「…ゾロ?」

問いかけると、少し離れた大木のひときわ濃い闇の中から音も無く剣士が姿を現した。特徴的な緑色の髪が月光に照らされて銀糸のように透けている。

先ほどまでの憂鬱も忘れてルフィはぽかりと口を開けたままその姿を見つめた。
長く影を引いて立っている剣士は周囲の静寂を乱すことなく、まるで風景の一部のように見える。まるで知らない生き物のようにも。

「…きれーだ…。」
「あぁ?」

だが、思わず口をついて出た自分の言葉に胡散臭そうに眉を跳ね上げた瞬間、纏った空気が一変していつものゾロが戻ってくる。それを少し残念に思いながらもどこかほっとする思いでその顰め面に笑いかけた。
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