倉庫

だから さよなら
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ひどく暖かい暗闇だった。

辺りを見回しても光はどこにも見いだせなくて、それなのにこの安心感はなんだろうとルフィは首をひねる。

―どこだここ。オレ、どうしたんだっけ。

くるりと周囲を見回しながら考えた。
島で大きな戦闘があって、皆がばらばらになって、ものすごい嵐が近づいていて…。

とにかく湾から船を出さなくては、別れる前のナミの言葉を受けて船へと急いでいた。湾が見える場所に出て、船が無事なことにほっとして油断した瞬間後ろから斬りかかられた。応戦して、だが雨でもろくなっていた足場が崩れ、おりからの突風にあおられたルフィと相手はそのまま崖を一気に転がり落ちた。

―そうだ。海に落ちたんだ。

思い出して首筋がひやりとした。

では、自分は死んだのだろうか。両の手を開いてじっと見つめてみる。真っ暗なはずなのに、なぜか見下ろした手はぼんやりと白く光っているように見える。

「―オレ、死んだのか……」
「死んじゃいねぇよ」

突然後ろから声をかけられて、驚いてルフィは振り返った。

「………ゾロ」

暗闇の中にぼんやりと光って見慣れた男が立っている。
その淡くにじんだような剣士の輪郭を見て、突然鮮明に崖から落ちた時のことを思い出した。

足場が崩れて崖をすべり落ちながら手を伸ばした。だが、掴んでも掴んでも岩はぼろぼろと崩れて、嵐で荒れ狂う波があっというまにルフィを飲み込んでしまった。ごう、という音を耳の奥に聞きながら冷たい水の中を深くへと沈んでいく。
ああ死ぬのか。こんなところで。皆は無事船を出せるだろうか。

目を閉じて、意識が遠のき始めた時、ふいに右腕を掴まれた。

―誰だ?

そして暗闇が訪れた。
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