NOVEL お祝い

満ちる世界
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「ゾロさぁ、酒と重り以外で欲しいものってなんだ?」
「重り?」

一心不乱に巨大なダンベルを振っている背中にルフィが問いかけると、トレーニングの手は休めず、だが眉間には思い切り皺を寄せてゾロが顔だけこちらに向けた。

「それ」

ルフィは窓枠に腰掛けたまま、顎でゾロの手にしているダンベルを指す。

「もっと重いやつここに置こうとしてフランキーに止められてただろ」
「…………あぁ…」

手にした鉄棒の先にいくつもつけられた、一つ数百キロはあるだろうと思われる円盤状の鉄の塊に目を移しながらゾロは気の抜けたような返事をした。

この前食事中に、次の島でトレーニングの道具を買うから金を貸してくれとゾロがナミに頼んでいると、それを隣で聞いていたフランキーがあまり重いものは駄目だぞと渋い顔をしてみせた。マストの上にトレーニングルームを作ってみたはいいが、さすがのフランキーもゾロのトレーニングに使う道具の総重量がまさかトン単位になるとは予想だにしていなかったらしい。そこまで重いものをのせる想定で設計していないのだと言われて、渋々ゾロは新たな道具の購入を諦めていた。

「なんだ、いきなり?」

頭の上にかまえたダンベルを、まるで竹光でも振るような気軽さで振りながらゾロが聞いてきた。
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