原作

眠れる虹
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当然悩んださ。興味があるっつったって別に本気で実践しようなんてこれっぽちも考えてなかったわけだし。だいたい顔見知りとそんなことになっちまって、上手くいってもいかなくても(だってお互い初心者だ)そのあと気まずくなんねぇかなって。だけど自分から言い出しておいてケツまくるのはなんかカッコ悪いし、なにより土方に、びびっていると思われるのだけはなんとしても避けたかった。

こいつにひけをとるくらいなら男相手のセックスの一つや二つびしっとこなしてやろうじゃねぇの。そんな決意をもって俺は首を縦にふった。
頷く俺に土方はちょっと口の端を上げてみせ、二人分の飲み代を財布から出してカウンターにおいた。


ホテルについて順番にシャワーを使い、さていよいよという段になっていきなり土方にのしかかられて面食らった。
てっきり俺が突っ込む方だと思っていたからだ。

そう言うと土方はやっぱりびっくりした顔をして『おかまの言う男のよさを知りてぇってんなら当然こっちだろ』と言った。

言われてみればそれは確かにその通りだったのだが、あいにくと俺はおかまじゃない。一方的に、しかも土方に突っ込まれるなんざプライドが許さない。だがまさかそこまできて逃げをうつわけにもいかなくて、苦し紛れに『じゃあ次の時は役割交代で』と言ったら、土方は間抜けなツラで目をしぱしぱさせていた。
いやだって俺だけってのもなんか不公平だし。
何がどっちにとってどう不公平なのかよくわからなかったが、とにかく俺は必死にそう言い訳をした。俺を組み敷いたまましばらく宙をにらんで考え込んでいた土方は、やがてため息をつきながら『まぁいいけどよ』といかにも渋々といった様子で頷いた。
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