NOVEL 海賊
□Time works wondersT:ナミ〜あ・がーる・みーつ・ざ・ぱいれーつ
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Side L
夜の海は静かだな。
ぼんやりと月を見上げながらルフィは思う。
別に港の近くでもなければ昼の海だってにぎやかなものは何もないというのに。
なんでかな。昼は光がきらきらして、うんと遠くまで見えるからかな。
一人で海に出たとき、ルフィはこの夜の静けさがいまひとつ好きになれなかった。寂しいわけでも、もちろん怖いわけでもなかったけれど、時間がひどく間延びして退屈で仕方がないと感じるのは決まって夜だった。よく眠ったと思って目を開けると辺りはまだ真っ暗でがっかりしたことも幾度かある。
でも、今は違う。
せまい小船の上長い手足をいっぱいに伸ばして大いびきをかいている隣の男を見やる。男の名前はロロノア・ゾロ。ルフィの最初の仲間だ。
刀を三本も使う三刀流の剣士でやたらに強い。その男のハラには黒く血のにじんだ包帯がまかれている。
「なあ、ナミにばかみたいだって言われてたぞ。」
しししっと笑いながら眠っている横顔に話しかける。
「やー、ほんとバカだよなーゾロは。オレは逃げろって言ったのによ。」
オレを檻ごと担いで逃げるんだもんなー。
「でも、まあ、助かったけどな。」
それに、結構面白かったしな。
胸の中で付け加える。
きっとナミに言ったらまたあのあきれ返った顔でばかじゃないのと言われるのはわかっているけれど、今回のケンカはなかなか面白かったと思う。
もちろん、ムカつくこともたくさんあった。あの犬の店は無くなってしまったし、町の復興にも時間がかかるだろう。それでもやっぱり。
「なあ、結構面白かったと思わねえか?」
問いかけた相手は戦っている時と同じ人物とは到底思えない間抜け面をさらして眠りこけている。
首をのばしてその顔を真上から覗きこみながら、ルフィは続ける。
「航海士も増えたしさ。これからもっともっと面白いこといっぱいしような。」
だから、いっぱい寝て早く治れよ。
眠って、力を蓄えて、明日起きたら三人でまた新しい冒険をしよう。
そう考えるだけでわくわくしてきて月明かりの中一人で笑う。
夜が退屈だなんてもう思わない。
→後書き