NOVEL 海賊
□Time works wondersU:ウソップ〜水平線
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「ナミ、さん?」
「ん?」
「あの、嘘って…?」
「だから、ルフィとゾロでしょ?恋人なんて嘘に決まってるじゃない。」
ケロリとした顔でナミが言い放つ。
「いや、だけど、ルフィがその、ゾロの背中に張り付いててだな…。」
「おんぶでしょ。」
「おんぶってお前…。」
いい年した男がか?ケガしたわけでもないのに?
続く言葉の出てこないウソップにナミはふう、とため息をつく。
「ガキなのよ。あいつらは。」
ほら、と指差す先ではゾロがルフィの頬をつねりあげ、ルフィはゾロの髪をひっぱるという大変子供じみたとっくみあいが繰り広げられている。
「ね?」
と視線を戻すナミを狐につままれたような気分で見返す。
「世間では魔獣だとか海賊狩りだとか言われてるけど、実際にはあんなもんよね。ルフィはあのとおり見たまんまだし。まあ、二人ともバカみたいに強いのは確かだから頼りにはなるけれどね。中身はあんたんとこのなんていったかしら、あのウソップ海賊団の子達。あの子達とたいして変わんないわよ。」
「…。」
「ただの友達よ。今のところ、ね。」
「…おい?」
情けなさそうな顔のウソップにナミがにっこりと笑ってみせる。
「何か進展があったら是非私にも報告してちょうだい。」
そう言うと話は終わりとでもいうようにくるりと背を向けもとの席に戻っていってしまった。
進展って言われても…。
いったいどこまでが本気なのか。さしもの自称ウソツキのウソップにもこの悪魔のような航海士の意図はわからない。
真面目な顔で航海図と向き合うナミの横顔をしばし呆然と見つめてから甲板を振り返る。そこではたった今までケンカをしていたはずの二人が並んで手摺りにもたれぼんやりと空を見ている。結局二人で昼寝でもすることに落ち着いたのかもしれない。
あたり前のように肩を並べて座る二人を見ていると自分一人おたおたしていたのがバカバカしく思えてくる。
恋人だとか友達だとか仲間だとか、そんなこと関係なくルフィはルフィでゾロはゾロで。ナミも含めて自分の大切な存在だから。
―なんでも、いいか。
ルフィが空を指差しゾロに何事か話しかけ二人で空の一点をぽかんと見上げている。その姿にウソップも二人の視線を追ってはみるがそこにはただ青が広がるだけで。
―空は青く、海はもっと碧く自分の乗った船は小さいけれど。
あの二人には今の自分には見えないほどの何か大きなモノが見えているのかもしれない。
そんな二人を見ながら、いつか自分にも、とウソップは考える。
自分はまだ走りだしたばかりだけれど、走って走って自分の夢を追い続けていればいつか自分にもあいつらの見ている景色が見えてくるのかもしれない。
空を見上げる二人の頭の向こう、船首の先にはずっとずっと遠く水平線が揺れていた。
→後書き