NOVEL お祝い
□やがて つながる
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Zoro〜the world that keeps on changing
ったく、嬉しそうな顔しやがって。ガキか。
斬れた腕でこするから顔じゅう血まみれですげぇことになってるぞ?
その血だらけの顔で嬉しそうに笑うお前を見てると俺まで腹の底からじわじわ笑いがこみ上げてくる。
お前の誕生日の祝いのはずだってのに、俺のほうが何かとんでもなくでかいものをもらってるような、そんな気になる。
お前はいつだってそうだ。
俺がお前に何かしてやる時、例えばそれがどんなにくだらねぇことでもお前は馬鹿みてぇにおおげさに喜んでみせる。
そんな時何かをしてやってるはずの俺のほうがやっぱりお前からよけいにもらってるような気分になるんだ。
そんなことを何度かくり返してるうちに鈍い俺にもだんだんわかってきたことがある。
誰かに何かをしてやる時、誰かに何かをしてもらう時、絶対に一方通行ってことはねぇんだってこと。
何かを与えてるつもりで、必ず相手からは何かをもらってるもんなんだな。
何かをもらってる時でも、必ず何かしら相手に返してるものらしい。
たとえその時は一方的なように見えても、必ずどこかを巡り巡って自分の元に何かが戻ってくる。巡り巡って誰かの元に何かが返っていく。
世の中ってのは俺が思っているよりもずっと複雑にからみあっていて思いもよらないところで影響しあっているものらしい。
お前に会わなきゃそんなことに気づくことも無かっただろうな。
お前に会う前俺の世界はひどく単純だったから。
そこでは考えるべきことといや世界一の剣豪になることだけで、人間は斬るべき奴かそうでない奴の二種類しかいなかった。
誰かに何かをしてやったり、まして誰かに何かをしてもらうなんてことは考えたことも無かった。本当にはそんなことはあり得ないのに、一人きりで生きている気になってた。
今は単純だった俺の世界はお前をはじめいろんなもんが入ってきてどんどん複雑になっちまってる。
時々思うんだ。俺は以前よりも弱くなってるんじゃねぇかと。
自分の野望と同じくらい大事なもんができちまったし、いつの間にか仲間ってもんがどんどん増えていって、そいつらにあたりまえのように傷の手当をしてもらったり、飯を作ってもらったり、航海のほとんどをまかせっきりにしたりしている。俺は俺でできるならそいつらを守りてぇなんてくだらねぇことを考えちまう。
なぁルフィ。これは弱さなのか?それとも強さなのか?
まぁ、どっちだっていいんだけどよ。
例えお前が俺にもたらしたものが弱さなのだとしても、お前の見せてくれる雑多でめんどくさくて騒がしい世界を俺は気にいっちまってるんだから。
お前に会うまで俺はどうやら俺の単純な世界に飽き飽きしていたらしい。自分が退屈してることにすら気づかないほどに退屈だった。
だから、ルフィ。俺はお前に感謝してるんだ。
わざわざ口に出して言う気はねぇんだけどな。