NOVEL お祝い

やがて つながる
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The others〜all’s right with the world


どぉん、という腹に響く轟音とともに浜辺からかなり離れて停泊しているはずのサニー号が揺れた。

遠く砂浜にはルフィとゾロが互いの技の出始めをつぶしあうような形で睨みあっている姿が見える。

「嬉しそうな顔しちゃって。……こういう時、あいつらって本物の馬鹿なんじゃないかしらって心の底から思うわ。」

手摺りに肘をかけてジュースをすすりながら双眼鏡を覗いているナミがのんびりと感想をもらす。

「まぁ、普通はやんねぇよな。」

頭上のゴーグルを引きおろして覗き込みながらウソップが同意する。

「わたし、初めて見ました。こんなものすごい“手合わせ”。」
「…こーゆーの手合わせって言うか?あいつらいっつもこんな物騒な真似してんのかよ?」
「なぁ、だいじょぶかな。ひどいケガとかしてねぇか?薬たりるかな。ナミ、次オレにも双眼鏡貸してくれよ。」

ぽかぽかと暖かい日差しの下、サニー号の甲板でクルー達が集まってこの船の船長と剣士の“手合わせ”を見学している。
古参のもの達は半ば呆れながらものんびりと、仲間になって日の浅いフランキーとブルックは好奇心と困惑の入り混じった様子で、心配性の船医は一人おろおろと、手合わせと呼ぶにはあまりに苛烈な二人の攻防を見守っていた。

「心配なんてしてやる必要ないわよ、チョッパー。ほんっとはた迷惑な奴らよね。」

双眼鏡を手渡しながらため息混じりにナミがぼやく。そんな彼女にゆったりとデッキチェアに腰を下ろしたままのロビンが微笑んだ。

「ふふ。そういいながらもちゃんとこういう人目につかない海岸を探してあげるのね。」
「―しかたないじゃない。誕生日なんだから。今日は特別よ。」
「そうね。」
「でも、そのせっかくの誕生日に主役がバテちゃしょうがないからあんた達適当なところで行ってあいつらに水ぶっかけてきてちょうだいね。」

ナミがウソップ、フランキー、チョッパーを順に指さしながら言う。

「おれもかよ!??……うっ、いててて…急に持病のかんのむしが…というわけでチョッパー、フランキー、あとはまかせた。」
「えっ、だいじょうぶかウソップ。」
「……かんのむしって子供の夜泣きとかのことよ、チョッパー。」
「おいおい、いいのか。あいつらの勝負に横からちゃちゃ入れたりして。」
「いいのよ。適当なとこでとめないとお互いぶったおれるまでやってるに決まってるんだから。日が暮れちゃうし、主役がいないパーティーじゃしまらないじゃない。」
「……バカなのか?あいつらは。」
「バカね。」
「バカだな。」
「バカですねぇ…。」
「バカなのか。」
「ふふふ。」

全員が同意したところで再び激しい衝撃音とともに船体が揺れた。その揺れる甲板を軽い足取りでキッチンでパーティーの準備をしていたはずのサンジが歩いてくる。

「じゃあ、ま、そのバカどもを見ながら乾杯ってことで。」

いつから話を聞いていたのか、にこやかに笑ってきれいに泡が立ちのぼっているシャンパングラスを皆に手渡していく。

「わぁ、きれいなピンク。」
「なんだよ、主役抜きでもう乾杯か?」
「いーじゃねぇか、別に。あいつらはあいつらでお楽しみ中。こっちはこっちで楽しんでたってバチはあたらねぇだろ。」
「―まぁ…それはそうか。」

手際よく皆にグラスをいきわたらせたサンジは近くのテーブルの上に色とりどりのカナッペが並ぶ銀盆を置いた。
美しく飾られたそれを見てチョッパーとブルックが目を輝かせる(約一名目はないのだけれど。)
早速手をのばそうとする二人をサンジが制止して言った。

「お前ら待てって、まず乾杯してからだ。―ってことで、皆さん。バカどもと良き誕生日に。」

芝居じみたおおげさな仕草でグラスを掲げるサンジのその言葉に、皆の口元に微笑が浮かんだ。

「「「「「「バカどもと良き誕生日に。」」」」」」

全員が唱和して晴れた空に高々と七つのグラスが掲げられる。

そんなハッピーバースデイ。


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