倉庫

終わりまで
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一つ頷いて隣に腰を下ろす。いつものようによどみない動作で折れた刀身を鞘に納めるのを待ってから再び問いかけた。

「いつだ?」
「橋での乱闘の時だ。」

自分が鳩のやつと戦っていたあの時。

「…悲しかったか?」
「…そんな暇ねぇよ。」

薄く笑うゾロに微かに不満を覚える。
確かにそれはそうなのだろう。
それでも、刀はゾロにとって特別なもののはずだ。自分の麦わらのように。宝物で、それに一緒に戦ってきた仲間のようなものなのではないのかとルフィは思う。
無意識に自分の麦わらに手をやりながら、なんとなく納得できずに口を開く。

「宝もんだろ?それに一緒にいっぱい戦ってきたし。」

子供のような理屈だと自分でも思う。それでも言わずにはいられなかった。

その言葉にちらりと視線をよこしてゾロが静かに答える。

「まあ、そんなところだ。でも、戦闘の道具だ。」

道具、という言葉に今度ははっきりと自分の眉が寄ったのがわかった。
ゾロが刀を扱う時、その凛とした佇まいが好きだった。
この世でたった三本だけ、ゾロと共にあることを許された刀。それは本当に特別で、もしかしたら自分よりもゾロに近い処にあるのかもしれないとさえ思っていたのに。

怒りとも哀しみともつかないもやもやしたものが心の中に募ってくる。眉を顰めて黙っているとゾロが今度はきちんと視線を合わせてきた。
その目があまりに穏やかでルフィはじっとゾロの言葉を待つ。

「そんな顔すんな。確かに大切なもんだけど、戦いで使う以上こうならないって保障はどこにもねぇ。―別に悲しくはなかったんだけどな。」

ひそめられた声にコクリと首をかしげてみせると、目元だけで笑ってゾロが続けた。
秘密を明かすようにそっと。

「ただ、自分の未熟さに腹はたつな。」

その言葉にルフィはパチリと一つ瞬きで返す。
驚いて見開かれた目に本当に微かにゾロが頷いてみせる。ルフィも、そうか、と一つ頷いて視線を前に向ける。

そうか。ゾロは悔しかったのか。自分の大切なもんを守れなくて。自分の目の前で大事なもんを無くしちまって。

その悔しさをルフィはよく分かる、と思った。自分にもっと力があれば守れたかもしれない大切なもの。
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