倉庫

終わりまで
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遠く目をやるとさっきまで赤々と燃えていた火がいつのまにか消えていて、周囲のバカ騒ぎもだいぶ小さくなってきている。

宴も終わろうとしている。

「いろいろ、無くしちまったな。」

メリーと、ウソップと、ゾロの刀。

「でも、無くさずにすんだもんも、取り戻せたもんもある。」

仲間全員の命と、ロビン。

「オレ達は、今はこんなもんだ。」

自分自身に確認するようにぽつりぽつりとルフィがつぶやく。

「…ああ。」

短く返されたゾロの答えに軽く頷いて、今度は少し大きな声で続ける。夜の闇に宣誓するようなきっぱりとした口調で。

「でも、もっと強くなる。」
「―そうだな。」
「次はもっといっぱい守れる。」

無くさないように。

横顔に視線を感じて振り向くとゾロの静かな目が自分を見ていた。その目に無言で、そうだろう、と問いかけるとそうだな、と低くはっきりとした声が返ってきた。

オレ達は、もっと強くなる。
自分も、ゾロも。

それは、願望でも希望でもなくて。信じている、というのとも少し違う。
自分はそのことを‘知って’いる。

それは揺るがない決意と信頼。

にかり、と笑ってみせると翠色の瞳も又わずかに細められる。

そうして、ルフィの隣でゾロはもたれていた木の幹にゆったりと体重をあずけ直し、杯に新しい酒を注ぐ。その横には三本の刀がひっそりと並べられている。
見慣れたその光景が嬉しくてルフィはそっと声を出さずに笑った。

黒い刀はもう無くなってしまったけれど、この光景そのものが無くならなくて良かった。

もうすぐ宴が終わって一眠りしたら、ひと時共に戦った者達も皆それぞれの日常に戻っていくのだろう。もちろん自分達は次の航海の準備に。

慣れない酒を飲んだし、まだ疲れも残っているけれど、もう少し起きてこうして二人並んでこの騒ぎが終わっていく様子を見ていよう。
もう少しだけ、この長かった戦いの終わりをかみ締めよう。
無くしたものと守れたものを思いながら。
眠って、明日目が覚めたら、新しい冒険が始まる。


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