NOVEL お祝い
□Seeten life
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そういうのは祭りじゃなく行事というんだという言葉はのみ込んで、ゾロはケースを開けて中から金色のチョコを一つ取り出してみた。
意外にずっしりと重たいそれを指先でもてあそびながらルフィの言葉を頭の中で反芻してみる。
「…告白って、お前。今更お前が俺に告白してどうするんだよ」
さすがにおかしくなって笑いながらそう言うと、ルフィもしししと声を上げる。
「いーじゃん、別に。それな、見た目だけじゃなくてちゃんと中に酒が入ってるんだぞ。―それともゾロ、チョコじゃなくて花のほうがよかったか?」
「―いや、遠慮しておく」
銀紙をほどいて酒瓶というにはずいぶんずんぐりとした形のそれを口に放りこむ。噛むとなるほど中からトロリと液体がにじみ出てきてアルコールの香りが鼻を抜けていく。
「―ふぅん…」
「不味いか?」
「いや、案外美味い」
お世辞ではなかった。ブランデーだろうか。菓子の中に入れるにはもったいないのではないかというような本格的な香りの酒がずいぶんたくさん入っている。チョコレートの良し悪しはよくわからないけれど、少し強めの酸味とカカオの香りが中の酒に意外に合っていた。
ゾロは木箱からチョコを六本取り出して、ルフィの前に差し出した。不思議そうにしながらも差し出してきた手の上にそれらをばらばらと乗せてやる。
ルフィは手の中のチョコに視線を落とし、少し不満そうに口を尖らせた。
「なんだよ?いらねぇのか?」
「そうじゃねぇよ。今日は好きな奴にチョコをやる日なんだろ?」
そう言うとルフィは驚いたように顔を上げてこちらを見た。ぽかんとした顔に笑ってみせると幾度か瞬きし、あらためて手の中のチョコを見つめ、そうして悪戯の共犯のような顔でにぃっと笑い返してきた。