NOVEL お祝い
□満ちる世界
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欲しいもの、というよりもやりたいことは色々ある。もっと強くなりたいし、早く次の島について冒険したい。だけどそれは誰かに頼んでどうこうなるという類いのものではなかった。
「えーと、えーと………仲間、か?」
「誰にもらうんだよ、そんなもん」
苦心してようやくしぼり出した答えはあっさりとゾロに却下されてしまった。当然といえば当然なのだが。
「…………むずかしいな」
「だろうが」
頷いてゾロは再び瓶に口をつける。ぐいぐいと二口ほど中身を飲んで、それから少し間をおいてから俺はなとつぶやいた。
「いつかまた鷹の目と戦いてぇ。戦って勝って世界一の剣豪になる。そのためにもっと鍛えて強くなりてぇんだ。―それ以外のことは正直どうでもいい」
「お前だって、似たようなもんだろう?」
「…………そだな」
船が大きく揺れて、窓辺に置いた瓶の中で透明な液体がたぷんと重い音をたてた。
「だからな…欲しいもんって言われてもたいして思いつかねぇんだ。先に進むための船はある。俺は船のことも航海のこともさっぱりだが、あいつらがいてくれるしな。食うもんにも寝るところにも困ることはねぇ。―こんだけあって、俺は他にいったい何を欲しがればいいっていうんだ?」
ゾロがこちらに顔を向けてきたのでルフィは黙ってその目を見返した。綺麗な色だなと思う。海の深いところに光が射した時の色だと思った。