たからもの+α

□それでも君を想う
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SIDE L

手が、好きだと思う。

節が太くて、意外に指が長い。剣を握るから掌は皮膚が厚くて少しかさかさしていて、けれど触るとほんのりと暖かい。その大きな手が髪や頬や背中を撫でてくるのがとても気持ちよかった。

背中も好きだ。

よりかかって昼寝するとすごくいい感じだ。それから敵と戦っている時、ふと視界の端っこの方にその背中が映ることがある。そうすると戦闘中なのになんだか楽しくなってきて、大声で笑い出したいような気分になる。

それからやっぱり眼が好きだ。

刀を持ってる時が特にいい。怖いくらいにまっすぐで、ギラギラしてるのになんでかすごく静かな感じで。動物みてーだなっていっつも思う。なのに笑うといきなり優しい感じになったりしてさ。そーゆーとこもすげぇいい。

今こうして離れちまっても、その手の温度や背中や眼やそれから声や仕草だって全部、まるで今目の前にいるみたいにはっきりと思い出すことができる。
そーゆーのは全部オレの中にあるんだ。

だけど、一日に何回も“なぁゾロ”って振り向いて呼びかけちまって、その度そこにおまえの姿が無いことにびっくりしたりする。
ふと手をのばして、そこにいつものあったかさが無いことにどうしても慣れることができない。

なぁゾロ。

こういう気持ちはなんて言ったらいいんだ?
寂しいとか、そういうのとはちょっと違うんだ。
そういうんじゃなくて、おまえが隣にいないってのは、例えば腕とか足とか自分の体のどっかがいつの間にか無くなっちまってたような、そんなすごく変で不便な感じがするんだよ。

変だよな。おまえはちゃーんとオレの中にいるのに。だけどやっぱり何かが足りねぇって思うんだ。

ゾロ。
こんなこと言ったらおまえは笑うか?なさけねぇこと言うなって呆れるかもな。
でもさ、思うくらいは別にいいだろ。

別々はイヤなんだ。俺はやっぱり早くお前に会いたいよ。
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