原作
□眠れる虹
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きっかけはものすごくくだらないことだった。
神楽が志村家に泊りがけで遊びに行ったので、遅い夕食を兼ねて飲みにでかけたときのことだ。入った店で偶然土方と会って、酒がまずくなるから出て行け、いやお前こそ出て行けなどと言い合いながら結局最後はいつものごとく一緒に飲むような形になった。酒が入って会話が微妙にシモっぽい方向に走り、その日の前日までかまっ娘倶楽部で仕事をしていた俺は、そういえば男とすんのってすげぇいいらしいよねお前経験ある?というようなことをなんの気なしにしゃべったのだ。
土方は嫌そうに眉を顰めて、あるわけねぇだろアホかと言い返してきた。てめぇこそそんな店で仕事してて一回もねぇのかよ、と。
いやいやあるわけねぇだろ。だってあれは依頼でヘルプに入ってるだけであって、俺そっちの趣味まったくねぇもの。ゴツゴツした野郎なんかよりさ、俺は脂ののりきったむっちり巨乳熟女なんかが好きなんだよ。ただまぁなんつぅか、あんまりアゴ美達が口をそろえて男のよさってやつを主張してくるもんだからちょっと好奇心っつーか興味がわいたっつーか。真撰組は男所帯だからひょっとしてって思っただけだから。
俺の言葉に土方は熟女かよ、と苦笑し、それからグラスに入った冷酒をくっとあけるとやけに真面目くさった顔をこちらに向けてきた。
『そんなに興味あるってんなら、試してみるか?』
俺と。
そりゃもうびっくりしたなんてもんじゃねぇよ。人間ってあんまりびっくりしすぎるとかえって何の反応も返せなくなるもんなんだって初めて知った。無表情で見つめ返す俺の目に視線をしっかりとあわせて、どうする、と土方が重ねて聞いてきた。