140字作文

□140字その三(似てる二人のお題 弐)
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「ホテル」「鼻」「決意」
「しばらく会えなくなる」ホテルの部屋で天井を見たまま土方が言った。静かな、だけど強い決意のにじむ声。知ってるよ京に行くんだろ。俺だってニュースくらい見るんだ。なぁこういう時見送る方はどんな顔をするべきなんだろう。「ふぅん。あっそ」鼻の上まで毛布を引き上げてそう答えるのが精一杯だ。


「病院」「手」「飲む」
※学生または社会人で同居な二人※
熱が38度もあるのに病院は嫌だと言う。面倒くさいと思いながらシーツを換え粥を作り買ってきた薬を飲ませたら、ありがとうと小声で礼を言われた。なんだそれ。調子が狂うったらない。からかうつもりで「手でも握っててやろうか」と問えば「うん、よろしく」と布団から右手を出され今度こそ絶句した。


「昨夜」「指」「追う」
「で?」「や、あの、つい出来心で……」そらした視線を追うように土方が顔をのぞきこんでくる。昨夜、ソファでうたた寝している無防備な姿につい魔が差してしまった。顰め面で煙草を燻らす男の指先に綺麗な珊瑚色。フレンチネイルっていうんだぜ。喉元まで出かけた言葉を銀時はかろうじてのみこんだ。


「夜空」「カラス」「日焼け」
夜中に目覚めたら土方がいなかった。多分急な呼び出しでも入ったのだろう。あの男と朝寝を楽しむには、どうやらカラスではなく世の悪党どもを一掃しなくてはいけないらしい。まったくやっかいなことだと、一人日焼けで剥けた腕をかきながら窓から夜空を見上げた。


「鰯」「指」「ビール」
昼の暑さは変わらず殺人的なのに夜はずいぶん涼しくなった。今日はビールじゃなく日本酒の気分だ。「秋だねぇ」見透かしたようなセリフに驚いて横を見ると、ほれと万事屋が空に指を向ける。見上げれば月を覆うように流れくる見事な鰯雲。
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