短編…番外編
□ただ愛しい人へ
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俺の頭上から、耳を塞ぎたく
なるような騒音が聞こえる。
普通なら誰しも屋上から中に
入るのに、俺はただひとり、
笑顔を浮かべ立ち尽くしてい
た
「…もう少し、だね」
誰に言うまでもなく、着陸の
体制に入った飛行機を見てま
た口がにやけるのが自分でも
分かった
ゆっくりと自分の手のひらを
確かめるように握れば、彼女
との温もりはまだ俺の感覚を
敏感にさせて、会えずにいた
というのにこんなにもはっき
りと彼女の面影を感じること
ができるのが嬉しくて。俺は
またもう一度手のひらを握っ
た
思えば、彼女のいない六年と
いう長い時間は俺にとって自
殺をすることと一緒だった。
だって、そうだろう?。自分
の思考に問いかけてみれば、
案の定なにも返ってこなくて
当たり前かとまた考えを戻し
た
嬉しいときも、楽しいときも
、哀しいときも、辛いときも
。この六年の間はひとりで味
わった感情
こんなこといったらリボーン
に叱られるな。なんて考えた
ねえ、君と離れてからの俺は
、君以外しか考えられないく
らいに脆くなってしまった。
冷たくなってしまった
だから、再会したら君のこと
をきつくきつく抱き締めても
いいかな
そうすればこの欠格も、冷た
ささえも全て元に戻るから
「 」
前を歩いている彼女の名前を
呼ぶ
振り向いた俺の愛しの彼女は
何も言わずに、俺の元に走り
出した
ただ愛しい人へ
(誓おうか)
(俺達はもう二度と、離れ
ないって)
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