短編…番外編

□ただ、もう一度
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広くて豪華な部屋に、あたし
と彼はポツリと立っていた 



「…わかってる」     



ぽつりと、あたしは彼に言う



「…うん」        



わかっていて、尚もそう返す
彼に、あたしは尚更そう告げ
るしかなくて       



「いつかこうなるんじゃない
かって、予想、してたよ」 



知恵なんか、知識なんか、知
能なんか、感情なんか、同情
なんか、悲劇なんか、   


ぜんぶぜんぶ、      


無ければ、良かったのに  



「ごめん」        


「許さない」       


「わかってる」      


「…許さ、ないっ…だから…
、行かないでよ…」    



困るってこと、わかってるの
に。口からでてしまうの。ま
だ一緒にいたいよ。お願いだ
よ。さよならなんか、やだよ



「…ごめん、な」     



その言葉を最後に、彼は部屋
から出て行った      


閉まった扉に、また開くかも
なんて希望は持てなくて  



「ごめんねだけじゃ、わかん
ない、よ」        



ぽろり          


我慢していた涙は、意外にも
簡単に落ちていった    



ただ、もう一度

(あなたが笑ってくれれば、)

(弱音、吐かなかったのに)













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