テニプリ短編
□You are toxic.
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とにかく、彼が欲しかった。
いつもつまらなさそうな顔をして、窓の外を見たり、ヘッドフォンで音楽を聴いていたり、何に対しても興味なんてなさそうな彼を、もっと知りたかった。
誘うのは簡単。私と同じ気持ちかどうか聞けばいいだけだ。彼が頷こうと拒もうと、私はどっちだって良かった。どちらにせよ、彼から反応が欲しかっただけだから。
「…アホかお前」
一言で全否定した割に、彼は拒まなかった。
「嫌だったら別にいいよ?」
「お前のことをアホやなと思っただけや」
だから俺のやりたいようにやる、と彼は潔く宣言した。財前のこういうところは、嫌いじゃない。
「そう」
どちらからということもなく、噛みつくようなキスをした。変なの。妙に慣れてるみたいに感じる。
「もしかして、同じようなこと誰とでもしてる?」
「んなわけないやろ」
嘘のような気もするけど、つっこんで聞くのも面倒くさい。私が欲しいものを彼がくれるなら、なんだっていい。たとえ彼が、私のことを何とも思っていないとしても。
「…如月こそ、誰とでもこんなんしてるんちゃうんか?」
それは心外だ。誰でもいいなら、わざわざ財前なんて選ばない。
気まぐれで、扱いにくい相手を。かといって、それを正直に言うほど私も素直な性格じゃないから、弁明なんてしない。
「さあ、どっちだと思う?」
誘ったのが私だとしても、主導権がどちらにあるかは明白だ。それを精一杯ごまかすように、強がるように、彼に聞いてみた。
「お前が誰かとこんなんしとったら、俺が気づかんわけないやろ」
勝ち誇ったようにそう言う彼を見て、一体誘われたのはどっちなんだかわからなくなる。多分、私が彼を逃がすこともないけれど、彼から逃げることも、できない。