虚空がもし、見えるのならば
□第三話 忘却
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もちろん、制服があるからといって教室にまで連れて行ったら大騒ぎになること間違いなしだ。それは避けたい。
かといって、このまま放っておいたら絶対面倒なことになるのはわかりきっている。
「どうしよ…」
頭を抱える私をよそに、銀閣さんはさっさと歩いていこうとしていた。慌てて引き止める。
「何だ?」
「今うろうろしてたら、危ないです」
「大丈夫だ。俺にはこいつがある」
そう言って、彼は腰に差した刀に触れた。いや、学校の中でそれ使われると大問題なんですけど。
「ダメです。とりあえず、昼休みまではどこかに隠れとかないと…先生に見つかったら…」
必死で隠れる場所を考える。
でもそんな都合のいい場所、すぐに思いつくわけがない。
私が考え込んでいる様子を、彼はじっと見ていた。ふと視線が合う。
「何ですか?」
「……お前、変わんねえな」
「?」
私に向かって言っているはずなのに、彼の目は私を通して、他の誰かを見ているようだった。