小説

□危険な感情<土←伊>
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もし答えが見つからなかったら、誰かに尋ねてみれば良い。

もし道に迷ってしまったら、誰かに道を尋ねてみれば良い。

もし危険な感情が芽生えてしまったら?



危険な感情
伊藤→土方



土方 十四郎。その男は僕の最も殺したい、いや、必ず僕の手で殺す男だった。

しかし、隊士や近藤さんや沖田君とじゃれあう君の姿は子供らしかった。

時折見せる表情や真剣に何かに向き合う姿は僕には決して見せない君だった。

そう。君が僕に見せる表情は明確な殺意のみ。

でも、僕は気づいてしまったんだよ。

君が僕に見せる表情の中に、仲間を思う気持ちがあることを。

僕は君が殺すはずだろう?

君は僕が殺すはずだろう?

そんな風に思うなよ。

そうなったらいざと言うときに剣が鈍る。

そんな表情を見せるなよ。

そうなったらいざと言うときに思い出す。


壊してしまいたい。


僕の中に生まれたもう一つの危険な感情。

もし君が僕を生殺しのまま生かしておくと言うならば、

僕は君に牙をむいて君を壊してしまうよ。

君の大切なものを全て壊して

絶望に打ちひしがれる君を壊して

僕だけの人形にしてあげよう。


そのために、君は生きている。

僕の人形となるために君は生きている。

でもなんだろう、この感情は。

君の顔を見るたびにちくりと胸が痛む。

君が殺意をあらわすたびにずきりと心が疼く。


これが恋?


これが愛?


僕らには決して許されない危険な感情。

それに気づいてしまった僕はどうすればいいんだい?

「だったら突っ走れよ。」

心の中で誰かが言った。

「だったらがむしゃらに当たってけよ。」

心の中で誰かが教えた。

「その先に見えたモンを精精大切にするこったな。」

心の中で誰かが僕の背中を押した。


無計画なんて僕には似合わないけど、たまにはそれもいいと思った。


「土方君。」


走って走って、その先にあるものを大切にすることに決めたよ。


「これからもよろしく頼むよ。」



もし危険な感情が芽生えてしまったら

ただ必死になって走って

がむしゃらに当たって

そしてその先に見えた光を大切にすれば良い。

いつか「頑張ったよ。」と胸を張っていえるその日まで。



END
 

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