rak buku

□差し込む日差し
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上村の歓迎会を終えた12月2週目。

小坂の言葉の意図が分からないまま、
僕はここに来ていた。

けやき坂46にとって大切な舞台、
ひらがなくりすます2018だ。

小坂の発言の意味が分からないことは
以前にもあったので深く考えても無駄なことだ、
そう思い辺りを見渡す。

開演を今か、今かと待ちわびる
1万人のファンで武道館が埋め尽くされている。


けやき坂の家庭教師を任された時に
欅坂46のファンクラブに入っていた。
1度は彼女達の本業を目にするのも良いだろう、
そう思いチケットに応募し当選した。

正直、後ろの方でいいと思っていた。
普段通りのテンションでいても
それなりに紛れられるだろうと思っていたからだ。

しかし、運営の方が操作したのでは、
と疑いたくなるような確率で最前列のど真ん中にいる。


本来、どの席にいても全力で楽しむべきなのだろうが、
こんな席にいるならば尚更だ。


普段と違うテンションの自分をメンバーに見られるのは、
気恥しいものがある。
メンバーに見つからないことを願うばかりだった。



そんなことを考えていると
ひらがなくりすますの幕が切って落とされた。




演出でベッドに寝ている柿崎、潮によって起こされた。

起されて立ち上がる瞬間目が合った。
勘違いなんかじゃなく間違いなく目が合った。

少し微笑んでウインクまでしてきた。
沸く周りのファン、と頭を抱える僕。

アイドルモードだと普段より
ウインクの沸点が低いらしい。

その後も勉強を教えているメンバーは
僕と目が合うと
目を見開いて驚いたり、満面の笑みで手を振ってきた。

小坂に至っては目の前でしゃがみこんで、
手を振ったりウインクをしたりしてきた。
やりすぎでは無いかと思う。



ライブの感想をひとことで表すと凄まじかった。

普段プリントと向かい合って
「ぅーん」などと唸っている彼女たちが
1万人もの人間を熱狂させ、
舞台上でキラキラ輝いていた。

彼女達にファンが着いてくるのも
納得出来るライブ内容であった。



ライブ終了後、電車で帰っていると
メンバーから

「名前さん、来てたね」

「楽しかった?」
「楽屋には来ないの?笑」

などとLINEが来ていた。
ライブ終了後疲れているだろうに
ありがたいことである。

「うん、ハッピーオーラ感じた」
「楽しかったよ」
「それはさすがに笑」

各々にLINEを返していると
小坂からもLINEが来た。

「来るんやったら言うといてや、あほ」

何故か怒られた。

「ごめん、ファンの方と同じ目線で見たくて」

僕は弁明する。

「あんな所おったら嫌でも目に入るわ



罰として 12月23日 デートな」



果たして小坂とのデートは罰になるのだろうか
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