rak buku

□日向の温もり
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ゴーン



紅白も大団円で終わりを迎え
高視聴率番組、ゆく年くる年が
除夜の鐘の生中継をもって
今年も残り数分であることを知らせている。



僕はまだ友人から聞いたことを
反芻して喜びをかみ締めている。



今から、バスで移動して
少し遠くにある神社に初詣に行くらしい。

小坂と上村が仲良さそうに
僕を挟んで会話をしているので
本当に帰してくれる気はなさそうだ。


2人の話を聞いているのは面白い。
上村が時々話の論点を斜め上へと飛ばしてしまう。
小坂が必死にそれを拾っている感じだ。

けやき坂のAB型は本当に面白い。


そんな2人を見て笑っていると。

「笑っとらんと名前さんも参加してや」

小坂に笑いながらそう言われるが、
変化球の捕球技術がないので遠慮しておく。





バスの準備が出来たようだ。
この場にいる全員でバスへと移動する。



さて、バスでどこに座ろうか


そんなことを考えていると
コートの袖を小坂に引っ張られて
小坂の隣の席へと導かれた。


「メンバー同士で座るんじゃないの?」


僕が聞くと



「菜緒は名前さんの隣がええんやけど

あかん?」




上目遣いで首を傾げ聞いてくる小坂。

このお誘いを断れる男は日本にいないだろう。


僕もその1人だ。



小坂にお願いして窓側に座らせて貰う。
スタッフさんは皆さん前方に座っているのに
両側メンバーとなると場違い感が凄い。




しばらくバスが走ったかと思うと停車した。
窓の外には人がまばらな神社が見える。


バスの前のデジタル時計は3:20を示している。


車内の多くのメンバーは
眠ってしまっていたが、
バスの停車と共に目が覚めたようだ。


小坂は寝ていなかったように思う。



それでも河田と濱岸が手を繋いで眠っているのが
小坂の向こう側に見える。

濱岸の肩に河田の頭が乗り、
その上に濱岸の頭が乗っている。

この2人とも他のメンバーより
人見知りの壁を突破するのに時間はかかったが
最近ではよく話すようになった。


「陽菜ちゃん、ひよたん置いていくよ」


降車する際に肩を揺らして2人に声をかけたが、


「ママ、もうちょっと…」


寝ぼけ眼を擦る濱岸にそう言われてしまう。


パパならまだしもママと
言われたことに軽く衝撃を受けた。

降車の流れを塞き止める訳にも行かず
2人を置いて降車する。


「菜緒も寝とったら
名前さんに起こして貰えたのに」

前方で小坂がそんなことを言っているのが聞こえた。


「どうやって起こして欲しいの?」


「そりゃ目覚めのキスってアホか」


佐々木美玲にいじられている小坂。
少し赤面している。


どこまでが本当なのだろうか。



「あーーーーー」


結局、河田と濱岸は
佐々木久美と東村の大声で起こされたようだ。
大声を出した2人はスタッフさんに
時間を考えろと怒られていた。
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