rak buku

□再会の夏
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しおりと出会って約1年。


父親の仕事の都合で僕は
東京に引っ越してきて、中学に通っている。


あれから、しおりとはLINEでの
やり取り続けている。

話す内容のほとんどは乃木坂についての事だ。

あの番組のここが良かっただとか、
新曲聞いた?などの内容がほとんどだ。


彼女の送ってくる文章からは
乃木坂への大きな愛と
昨年助けてくれた時のような優しさ
を感じることが出来る。


僕はしおりの笑顔が忘れられないでいる。


宮城にいる彼女とは
会おうとすれば会えないことは無いが、
なかなか会おうと言い出せないでいる。

シンプルに距離が遠いのだ。


物理的距離が心理的距離を表しているようで
悲しくなってくる。



「名前、
3期オーディションのshowroomやってる」


高校受験のため学校の図書室で
勉強をしていると友人がスマホを見ながら
声をかけてきた。


「お前、勉強は?」


今日は友人から勉強を教えて欲しい、
と言われ学校に来ているのだ。
僕も勉強しなければならないので、
15分目を離した間に友人はスマホを見ていた。

やる気はあるのだろうか?


「まぁまぁ、休憩休憩」


こいつ休憩ばかりではないか。


「おっ、この子可愛い、10番ちゃん
同い年だって」


そう言ってスマホの画面を
こちらに向けて見せてくる友人。


その画面に映されていたのは、


「しおり…」

忘れられない彼女の綺麗な顔。

思わず名前を呟いてしまった。


「え?名前何言ってるの?知り合い?」


こういうことにだけ目ざとい友人。


「この子宮城って言ってるでしょ?
僕が居たのは名古屋

知り合いなわけないじゃん」


「そりゃそうだよなぁ」


僕の話を半分聞き流すように
自らの方へスマホを引き戻し
コメントを打ち込んでいる友人。


しおり、受けてたんだ。


彼女からは一言も聞いていない。
1日会っただけのオタク友達だ、
当たり前と言えば当たり前だろう。

それでも3期生オーディションが発表になった
46時間TVの時は2人で、通話をしながら
見ていたのだ。
あの時には心に決めていたのかもしれない。


やはり物理と心理は比例するのだろうか。
そう思う僕を尻目に
友人のスマホは聞き慣れた彼女の声を
しっかりと僕に届けてくれた。
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