rak buku

□pour la première fois
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「名前、これ、はい」

事務所にて雑務をこなしていた所、
名前は美月から2つ折りにされた髪を渡された。
その紙には体重とスリーサイズが記されている。


「頑張ってるね」

紙を広げて周りの人にはみえないように
サッと確認した後、名前は告げる。


美月の体型の変化を現地に同行する多忙なスタイリストに報告するため。
フランスへ向かうまでの3ヶ月、
名前は定期的に
美月からこの紙を受け取っている。


「当たり前じゃないですか〜
念願の写真集ですし」

なんて軽口を返してくるが
美月の努力に目を見張る名前。


「絶対いいものにしようね。
なんかしたいことあったら言ってね
無理にでも通すから」

美月の写真集は名前にとっても
今まで任された中で1番大きな仕事だった。

それが決まったのも美月が

「苗字さんがいいです」

と会議で言い切ったのが要因の一つでもあるのだが。

とにかく美月の初めての写真集には名前も力を入れていた。


「いっつもそれ言いますよね」


美月は笑いながら答える。

「じゃあ撮影が終わったら観光したいです」

美月が続けるやいなや
名前はスケジュール帳をめくる。
出来もしないのに中途半端な期待を
持たせるような嘘をつけない
名前らしい行動を見て
美月は名前に優しい眼差しを向けた。
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